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笑顔の行方 V____ 第2章
2001年2月
しいな 作


「なんか・・今テンション高くない? 」
ドラマの番宣の心理テストの後・・深キョンこと深田恭子ちゃんがそう言った。
思わずドキッとした・・オレ。
同じくドラマの共演者の内山理名ちゃん、窪塚洋介くんにもひやかされるしなぁ。
まずいよー。
あの心理テスト当たってるじゃん。
変な汗かいちゃうよね・。
うーん・・。
ドラマの共演者の3人にはバレバレで突っ込まれるくらいなのに
何で日向さんは気づいてくれないんだろ?
鈍感なのかなー。
オレこと滝沢秀明はドラマの収録の間に身体を鍛えながらそんなことを考える。
電車でまちぶせして、日向さんを送りに行ったときに・・好きだって言えば良か ったかな。
あの時・・寝てる耳元で言ったんだけどね。
女性誌の取材でインタビュウ受けたときも言われたっけ・・。
「簡単なのに言ってくれないのが女はイヤなんだけど・・。」
そうかぁ・、なんて納得したんだけど・・上手く行かないもんだな。
日向さんは、どうなんだろ?
オレを見る目は恋してるっていうより一緒にいて楽しそうっって感じだけど・・。
この間は・・あのウインクにやられたって感じ。
胸にズギュンときた。
もう・・可愛くてさ。
あの時はたまんなかったなー、と思い出してにやけるオレ。
その夜は全然眠れなかった。
翼もつき合ってくれた。(眠いはずだったろうに・・。)
あいつも「オレ・・遠慮すれば良かったね。」なんて気を使っちゃうしな。
ドラマでもプライベートでも片思い。
せつないモードなオレ。
もう・・心臓もたないかも・・。
腹筋を鍛えるペースが早くなる。
同時に鼓動もスピードアップ!
汗が吹き出してくる。
それを拭ってため息をつく。
あの・・笑顔がオレの栄養剤。
会いたいと願っていると・・、携帯のメールが来る。
山Pからだった。
「日向さんに会ったよ。MD預かってます。」
おおっ?例のやつかな?にしても偶然だなー。
いいよな・・そんな偶然、とメールの返事を打ち込む。
内容は会ったとき貰うって事とドラマ頑張れっと送信した。
その時スタッフさんが声を掛けてくる。
「まなとさーん。出番です。」
「はーーい。」
オレは、答えてマイ携帯ストーブを消して裏返して着てたジャンバーを脱いで 走ってスタッフと共演者がいるところへ向かっていった。
今度・・会った時・・言うぞっ、ていうか絶対言う!
心に誓ったオレだった。


                    


 もう、あれから一週間近く会ってない。
滝沢くんのことを思いつつ・・仕事に追われていた私。
カレンダーを見ながらため息をつく。
私も深夜まで仕事だし、泊まることもあるから・・なかなか連絡が取れない。
「ヘコんじゃう・・。」
そんなとき携帯のマナーモードが作動・・誰かと思ったら・・彼女だった。
「もしもし?どうしたの?」
彼女の名前は片桐翔子。
青山の一等地の美容室に務めるカリスマな美容師。そして、私の友人。
「いやぁね。どうしてるかと思って。」
相変わらずのチャキチャキ調で明るい声。
「この間はごめんねー。途中で帰っちゃって。」
私は、彼女に謝る。
すると、彼女はくすくすと笑い出す。
「何よ・・何か良いことでもあったの?」
耳に意識を集中する。
「この間の商社勤務の彼さ・・。また日向に会いたいってさ。」
「三浦くん?」
この間の合コンで偶然中学の同級生と出会ってしまった。
懐かしい話しで盛り上がったけど・・。
彼の名前は三浦一大という。
「ふーん・・。もち・・断ってくれたよね?」
「何で?いいじゃない。会うくらい。」
すっごくすばやいお答え。
私は目眩を憶える。
私に好きな人がいること知ってるくせに・・。
「あーー。あれってマジだったの?冗談かと思った。何?本気なの?」
「うん・・。」
私は静かにつぶやいた。
「それで?告ったの?」
「まだ・・だけど・・。」
私は力無くそう言った。
そう・・あの時良い雰囲気だったけど、何も言えなかった。
両想いかどうかは・・わからない。
「携帯と自宅の番号おしえたよ。あと会社もおしえといた。」
なんですと?私は・・声も出ない。
「あたしはいい人だと思うよ。友達の彼には申し分ないしね。」
だけど・・私は滝沢くん・・秀くんの事が好き。
だから・・答えられないよ。
彼のことを想像する。
周囲を和ますタッキースマイル。
普段見せる・・優しさを称えた瞳が大好き。
「さっさと言ってスッキリっすればいいのに。まぁ・・とにかく頑張って、
上手く行ったら紹介してね。じゃね!」
と一方的に電話を切られた。
分かってるけど・・なかなか言えないんだよぉ。
携帯を切ったあとため息をつく。
すると・・再び携帯に電話が・・誰だろう?
番号は見たことも聞いたこともないナンバーだった。
恐る恐る・・出る。
「もしもし?」
「僕だけど・・わかる?三浦だけど・・。小沢さんだよね?」
ゲゲッ!噂をすれば何とやらだ。
なっ・・何だろう?緊張する私。
「ああ・・うん・・。この間は・・どうも・・。」
「あのさ、飯食べた?近くまで来てるんだ。一緒に食べない?」
なっ・・なんですと?近くまで?!私は時計を見る。
確かに・・お昼を回っている。
「ああ・・忘れてた。まだだけど。」
「出てこれる?近くに安くて上手い店あるんだ。行かない?」
こっこれはっ。私は周りを見渡す。
仕事に没頭してる人がいれば、お昼に行ってる人もいる。
「なんだ?小沢。」
先輩の1人が気づいて声を掛けてくる。
私は、お昼に行って来てもいいか聞いてみた。
「ああ、行ってこいよ。ちゃんと食べないと保たないからな。」
「すみません。早めに帰ってきます。」
交際をしっかり断るべく決心をして、彼に「O・K!」と承諾した。

 そこは、定食屋さんで本当に安くて美味しいところだった。
「こんなところで良かった?分かんないんだよね。女の子の良く行く店とかさ。」
彼は、メニューを見ながらそう言った。
「あ・・うん。全然OK。」
私は、頼んだしょうが焼き定食をもりもり食べながら、そう答えながら言う。
「でもさー。意外だね。ほら、エリートだって聞いてるからさ。」
「まさかぁ・・そんなしょっちゅう食べないよ。」
ふーん・・案外庶民的なんだね。
彼は、いかにもエリートビジネスマンって感じでスーツを着こなしていた。
私と言えば楽なパンツスタイル(いつも通りだね。)
まぁ・・あれから、彼女に言われて化粧はするようになったけどね。
「今度行こうよ。寿司とかさレストランとかでもいいよね。」
「ああ・・そうだねー。そのうち・・。」
とは言ってみたものの、期待を保たせるのもまずいよね。
ここは、きっぱり断った方がいいよね。
「あのさ・・誘ってくれるのは、うれしいんだけど・・。」
「わかってるよ。でも・・つき合ってるんじゃないんだろ?」
私は何も答えられない。
そうだよ・・。片思いだよ。
「じゃ、僕にだって望みがないわけでもないと思わない?」
そう・・言われても・・。
私・・秀くんに失恋したら、すぐ違う人とつき合うなんて出来ないと思うんだけど・・。
大好きなのは秀くんだから。
今は彼以外には考えられないもの・・。

「まぁ、だからってすぐに僕の方に向いてくれるとは思わないけど。」
と爽やかに笑ってそう言う。
そうだね。
あの夏に・・あの時秀くんに会ってなかったら、無いこともないかもね。
すべて、あの瞬間から秀くんが私の中でかけがえのない人に なったのかも知れない。
 私と三浦くんは、お店を出て並んで歩く。(奢ってもらった。汗)
結局・・うやむやにはぐらかされてしまい、更に途中まで一緒に帰ることに・・。
何をしてるんだろう・・私。

日向さぁーん。みーっけ!」
そう、突然、声を掛けられた。
私はびっくりして振り向いた。
どこか、幼さを残すハスキーボイス。鼻に掛かったくせのある声。
私はすぐわかった。
かなり茶褐色に染めた髪がとてもよく似合う。
大きな瞳がとても印象深い。
「こんちわっ!お久しぶりっす。日向さん!」
「うん!久しぶりー。何?仕事?ドラマだっけ?」
彼の名前は山下智久くん。
山Pという愛称で、名付け親は秀くん。
Jrのミドルの中ではダントツの人気を誇る美少年。
「そっ!ドラマのロケで撮影中なんすよ。偶然っすね。びっくり!」
『ほら、あそこでね。』 と彼の見た方角には、共演者やスタッフがいた。
山下くんとは秀くんの家に遊びに行ったとき何度か会ってる。
山Pは私の隣にいる三浦くんをじーっと見つめてる。(やばいなぁ・・。)
「会社の人?友達ですか?」と聞いてくる。
「うん・・まぁ。」
何となく、はぐらかす。(汗)
「ふーん。」ちょっと・・疑惑の視線。
「お昼で、外にご飯食べにね。今、帰るところ。大変だねー。寒いのに・・。」
「まぁ・・仕方ないっすよ。仕事だもん。頑張るだけっす。」
と無邪気に笑う。
良かった・・気にしてないかな?
身体は大きくてもやっぱり子供だわっ。可愛い。
私も自然と顔がほころぶ。
あ・・そうだ。しばらく秀くんに会えないんだよね。(悲)
私はバッグから編集&アレンジ済みの例のMDを取り出す。
その間・・三浦くんは山Pを見つめながら不思議そうな顔をしてる。
「コレ・・彼に渡してくれる?暫く会えそうにもないから・・。」
「いいですよ。聞いてますよぉ。楽しみだなぁ・・聞いてみていいっすか?」
私が頷くと彼はスタッフに呼ばれる。
手を振って笑顔で去っていった。
ああ・・可愛い。あんな弟がいたらなぁ。
すると、三浦くんは、あからさまな咳をする。
「まさか・・あの男の子って例の?ずいぶん若くない?17才くらい?」
三浦くんは呆然と山Pの後ろ姿を見てつぶやく。
私は、「まさかぁ。」と笑って否定する。
「ドラマって・・タレントか何かなの?そうゆうの疎いんだよねー。」
「そうなんだ・・。」
良かった。
疎い方がいいよね。
万が一名前言っても分からないだろうし。
「ちなみに、彼は15才だよ。犯罪になっちゃうでしょ。」
笑ってそう言うと、彼はビックリしてた。
そうだよね・・山P、大人っぽいから。
私たちは再び並んで歩く。
もう少しでPM1:30になる。
「君の好きな相手・・。どんな人か会ってみたいな。」
いきなりそう切り出す。
「えっ!」
「だってそうだろ?まず敵を知らないとさ・・。」
そう言って「じゃ!また。」と手を振って地下鉄の入り口に入って行った。
そ・・そんなの無理に決まってるじゃないのよ。(それも・・敵って・・。)
会わせるには行かないでしょう。
というか・・何て説明するのよ。
「好きです。」って伝えてもいないのに・・。
と・・また悶々と悩む私だった。


―つづく―


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