雪のクリスマス・・・・・ 4夜
|
2000年12月 海亜 作 |
クリスマスイブ
朝ご飯を食べてる時にお母さんが言った。 『今日、留守番お願いね。』 『うん。分かった。』 『帰って来るのは明後日の夜だからね。』 『うん。』 『お父さんと2人で旅行なんて何年ぶりかしらぁ。』 『新婚旅行以来だったりして。』 『あっ!そうかもしれないわ。』 『どこ行ったんだっけ?』 『冬の北海道。雪が真っ白で、空気が澄んでて・・・』 お母さんの長い話が始まった。 黙って聞く事5分。いつもの事だけど話し出したら止まらない。 『倫ちゃんも早くいい人見付けて一緒に行くといいわよぉ〜。』 『はいはい。』 『ねぇ〜、居ないの?』 『さぁ〜?』 『あっ!また、そうやって逃げる。もぉ〜お母さん心配で心配で。』 『分かった、分かった。今度、紹介するよ。』 私は苦笑いしながら言った。 『えっ?ほんと?楽しみだわぁ〜。どんな人?』 『超スーパーアイドル!』 『またぁ〜、嘘ばっかり言って。』 『ほんとは・・・オヤジ!』 『いやぁ〜ん。嘘でしょ?』 『どっちもほんと。あっ、もうこんな時間。遅刻しちゃうよ〜』 『ちょっ、とっ、倫ちゃんっ!』 私は、お茶碗を片付けて急いで玄関へ向った。 ほんとに滝沢くんを紹介したら・・・お母さんどんな顔するんだろう。 悲鳴をあげるか、声が出なくなるか、腰を抜かすか。 とにかくビックリするだろうなぁ〜。 想像しただけでニヤけてしまった。 玄関で靴を履いてる時にお母さんが言った。 『ねぇ〜。1人で大丈夫?』 以前の、あの嫌な出来事を思い出したのか心配そうに私を見て言った。 『うん!大丈夫。じゃぁ行って来まぁ〜す。』 笑顔で答えた。 本当は少し不安だったけど・・・。 今日は徒歩で駅まで向った。雨が降っていたから。 いつもは自転車で行く道のりが長く感じた。 うぅ〜寒い。手袋とマフラーの暖かさが身に染みる。 店に着いたのは午前9:00。 それから開店の準備をした。 今日はパーティーの準備をするという事で香代子は居ない。 だから店番は私、1人。 その代わり明日は休みを貰える事になった。 日曜日という事もあり、開店直後から大忙し。 プレゼントを買いに来る人が大半でラッピングした数は測りきれない程。 『ねぇ〜。私、これがいいなぁ。』 『いいよ。お前の欲しい物、何でも買ってやる。』 そんな会話も何十回も聞いた。 最初は“いいなぁ〜”なんて思ってたけど 最後の方になると“またか〜”という感じになった。 午後2:00。 TVを見ながら、ちょっと遅い昼食を取った。 〜本日は全国的に大寒波が襲い各地で大雪警報が・・・ 交通機関も麻痺しており空の便は・・・〜 だから、こんなに寒いんだぁ・・・。 私は夕方旅立つお母さん達の事が気になった。 午後6:00。 通常なら7時だけどお客さんの足も途絶えた。 だから早めに店を閉めた。 ようやく慌しさから解放されコーヒーを飲んで一息ついた。 店の窓にイルミネーションが映る。 その光は眩しいくらい輝いて見えた。 店の前には大きなクリスマスツリー。 しばし、それを見ていた。 コンコン! ドアをノックする音が聞こえた。 そして女性の声が。 『すみません。いいですか?』 もう閉店なのになぁ。 そう思いながらも笑顔で答えた。 『はぁ〜い。今、開けます。』 ガチャ! 『メリークリスマス!』 『うわぁ〜!佳子さん。お久しぶりです。』 『ごめんね。もう閉店なのに。』 『あっ、いいんです。それより佳子さんに会えて嬉しいです。』 『私も。会いたかったわぁ〜。』 そう言って抱き付かれた。うぅ〜温かい。 『あっ、コーヒー飲みます?』 『うん。ありがと。』 それから今までの時間を埋めるかのように話し合った。 『あっ、そうそう。倫子ちゃんにプレゼントが有るの。』 『うん。凄く大した物なのよ。大事にしてねぇ〜。』 と言って紙袋を手渡された。 中を見ると綺麗に包装された物が。 『ありがとうございます。開けていいですか?』 『いいわよ。』 そして、それを丁寧に解いた。 『うわぁ〜。可愛い!!』 それは、白いニットの帽子。 早速、被ってみた。 『どうですか?』 『うん!似合う。』 『ありがとうございます。大切にします。』 『あっ!そうそう。あのね。もう1つプレゼントがあるの。』 そう言ってカバンから一枚の紙切れを出した。 ―つづく―
|