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リース 雪のクリスマス・・・・・ 3夜 リース
2000年12月
海亜 作


サンタととなかい

クリスマスまであと・・・・10日

ショックのあまり、しばらく何も聞こえない状態に陥っていた。
すると電話の向こうの女の人がしきりに話し掛けていた。
『もしも〜し。聞こえますか?』
『あっ、はい。ごめんなさい。』
慌てて返事をした。
『あの・・・私の事覚えてますか?』
『えっ?』
どこかで会った事あったかな?
しばらくの間、沈黙が流れた。
『やっぱり覚えてないみたいですね。』
『・・・ごめんなさい』
『あっ!いいんです。1回しか会ってないから。』
『どこで会いました?』
『10月14日のジュニアコンサートです。』
あっ!私は思い出した。
『あっ、美亜さん?』
『はい!名前覚えててくれたんですね。嬉しい。』

私達はコンサート会場で隣同士になった。
お互い1人だったので、何となく話をした。
そしてなにか不思議な縁を感じお互い電話番号の交換を。

あの時の事を思い出し懐かしくなった。
でも・・・。なんで私の新しい番号を知ってるんだろう。

『あの・・・この番号はどうして分かったの?』
『あっ、そうですよね。今日はその事を早く伝えたくて電話したんです。』
それから話してくれた。
どうやら私はずっと美亜さんに電話やメールをしていたらしい。
あの日、メモした番号は滝沢くんのじゃなかった。

『ごめんなさい。私メール貰ってから何度も返事しようと思ってたんですけど 急にこっちに転勤になって。
慌ててたんです。 最近やっと落ち着いたから返事をしようと思ったら・・・。
昨日の夜、貰ったメールで私宛じゃないって分かったんです。
滝沢くんって書いてあったから・・・。』
あっ!
言葉に詰まって答えられなくなってしまった。
どうしよう・・・。どうしよう・・・。
『あっ、大丈夫です。私、絶対に言いませんから。』
付き合ってるのバレたかな?
でも、あのメールの内容で分かるはずがない。
『なっ、なんの事?』
しらじらしく聞いてみた。
『倫子さんは付き合ってるんですよね?滝沢くんと。』
うっ、結構鋭い。
私は思わず本当の事を言ってしまった。
『そっ、そうなのよ。』
『えっ?ほんとですか?凄い、凄いですね。』
自分の予想が当ったのが嬉しいのか声が弾んでいた。
『もしかして・・・私を試したの?』
『はい。』
そんな張り切って返事して・・・。
でも、なんか憎めない感じ。

『いいですねぇ。ほんと羨ましいです。私も・・・。』
今度は少し切ない声が聞こえた。
“私も”ってなんだろう?
続きが気になって聞いてみた。
『なに?』
『あっ、なんでも無いです。』

美亜〜!電車もうないよ。
電話の向こうで誰かが話し掛けていた。
え〜、うそぉ・・・。
美亜さんが答えていた。

『あっ、ごめんなさい。それに、こんな長電話しちゃって。』
『ううん。楽しかったよ。また電話掛けてね。』
『はい。あっ、メールもします。』
『うん。待ってるね。』

電話を切った後、不思議な感じがした。
ずっと前から友達だったような・・・。
これからずっと友達で居れるような・・・。

あっ!私は思い出した。
滝沢くんから電話が掛かってくる可能性がゼロになった事。
やっぱり佳子さんに聞いてみるしかない。
次の休みに行ってみよう!

佳子さんの家は高級住宅街にあった。
地下1階、地上3階のシックな感じの建物。
『ここかぁ〜。凄い豪邸。』
庭には綺麗に手入れされた花々。
玄関にはクリスマスツリーが飾ってあって季節感を感じる。


リース
ピンポーン!
チャイムを押した。
反応が無い。
あれ?留守かな?
夜だったら誰かしら居ると思ってたのに・・・。
そう言えば、玄関の明かりも灯ってない。
家の中の電気も点いていない。
『出直すか・・・。』
帰り道の足取りは重く、そして家までの距離が長く感じた。

それからクリスマスシーズンも真っ盛り。
店も大繁盛して私も忙しさで毎日ヘトヘトになっていた。
そうして1日、2日、3日・・・と時間だけが過ぎていった。
連絡が出来ないまま。

―つづく―




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