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リース 雪のクリスマス・・・・・ 2夜 リース
2000年12月
海亜 作


サンタととなかい


『ありがとございました〜。』
私は今、親友(香代子)の店で働いている。
輸入雑貨を扱ってる可愛いファンシーショップ。
場所は新宿に有り、学校帰りの女子高生が多い。
今日も会話が聞こえる。。 『ねぇ〜。イブはどうすんの?彼氏とデート?』
『当然。1人で過ごすなんて寂しいじゃん!』
『だよねぇ〜。』

そんな事言ったって・・・私、何の予定も無いんですけどぉ
心の中で叫んだ。

『倫(とも)〜。イブは予定入ってるの?』
香代子が聞いてきた。
『だから〜。。。無いっ!って言ってるじゃん。』
『えっ?私、今初めて聞いたんだけど。』
『あっ、ごめん。ごめん。こっちの話。でっ、なに?』
『あのさぁ。家でささやかなパーティーするんだけど来ない?』
『ありがとう。でも・・・止めとく。』
『そっか。残念。家のチビちゃん会いたがってたのに。』
『ごめんね。また今度誘って。』
香代子は若くして結婚し、現在5歳の男の子が居る。
ダンナさんも優しそうで・・・まさに幸せそのもの。
時々、愚痴を言ってるけど、それも羨ましいとさえ思う。
だからパーティーに行かないと言った訳じゃない。
もしかして彼と会うかもしれない。と密かに期待していたから。

帰りの電車の中。
【恋人達のクリスマス】
と書かれた大きな看板が目に飛び込んで来た。
外国人の2人が寄り添っているキスしてる。

あの日の事を思い出した。
“もう一度キスしてもいい?”
長く切ないKISS。
あれから1度もその感触を味わえないでいた。
切ない、寂しい思いは冬の風と同じ様に吹き荒れている。
冷たくて凍えそう・・・。

TVのワイドショーで2001年、新ドラマの制作発表の模様が流れていた。
このドラマ【ストロベリー・オンザ・ショートケーキ】の出演が決まった時 真っ先に電話してくれたのを思い出した。

“あっ、倫子さん?俺、来年1月から始まるドラマに出る事になったんだ。
さっきマネージャーさんから聞いたの。1番最初に知らせたかったんだぁ。
これから忙しくなるけど電話は毎日するよ。だって・・・繋がっていたいもん”


『主演の滝沢秀明です。』
画面から見たその姿で髪の毛が伸びて黒くなったのを知った。
恋人なのに・・・。
心に穴が開いて、そこから隙間風が遠慮無しに入ってくる。

今日も一方通行のメールを出した。
【お仕事お疲れ様。滝沢くん髪の毛黒くしたんだね。
今日ワイドーで見たよ。うん、似合ってた。
最近ますます寒くなったけど風邪引いてない?
私は元気だよ。それじゃ、頑張ってね。 倫子】

送った後、何度も携帯を見た。
でも、やっぱりメールはこなかった。
佳子さんに聞こうと思ったけど佳子さん自身の番号が分からない。
前の携帯を取りに行った時には、もうすでに処分されていた。
自宅の住所は分かっていたけど、そこまでして迷惑を掛けたくなかった。
それに・・・掛かって来ないという事が臆病にさせた。

その夜、久しぶりにアルバムを開いた。
知り合ったばかりの頃、家に遊びに行った時の、
髪の毛を切る前、雑誌の取材の時の・・・。
まだ2人で一緒に撮った写真は一枚も無い。
はぁ・・・。
出るのは溜息ばかり。
その時、着メロ♪もう君以外愛せない♪が鳴った。
画面を見た。【秀くん】
やったぁ〜!!掛かって来た。
心弾ませながら電話に出た。
それまで吹いてた冷ややかな風が一気に温かく感じた。
『もっ、もしもし!』
『あっ、あの・・・。』
えっ?!女の人?
声の感じからして20代後半〜30代前半。
うそぉ・・・。なんで?どういう事?

―つづく―




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