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涙のあとは 第3章
my brother
2000年10月
しいな 作


「どうだった?楽しかった?巧。」
帰るとき、私が弟に聞くと嬉しそうに「うん、楽しかった。」と元気良く答えた。
「僕、がんばってレッスン通う。いいよね?おねーちゃん。」
「そうだね。がんばんなね。」
これまた「うん!!」と元気良くお返事。
あのあと、お礼も言ってなかったなぁ。私は翼くんの顔を思い出す。
やさしい、アーモンドの瞳に吸い込まれそうだったな。かっこいいなぁ。
って恋人と別れたばっかりだっていうのに、何考えてるんだろ。ばかだなぁ。
相手は超人気者のアイドルだもん。変なこと考えるのよそうっと。
あっ、でもファンになるのは自由だよね。うん。
そして、弟と家へ帰るために駅に向かう。
ふと、お腹の鳴る音が聞こえる。私は吹き出す。
「なんだよおー。こっちはすっごい運動したんだよ。」
「わかったから、どーしようか・・。ご飯食べる?家にTELいれておこうか。?」
私は、携帯から家に連絡をいれる。ご飯を食べて帰ることと何時頃になると伝える。
すると父がご飯を食べ終わったら、迎えに来てくれることになった。
私と弟は近くのファミレスに入る。



 「なんか、今日は目の保養しちゃったなぁ。」
山Pはにこにこと笑顔になる。
横にいる斗真は「そーだねー。また来てくれるといいね。」 と頷く。
その前を滝沢と俺こと今井翼が肩を並べて歩く。
「なぁ、今日どーする?」 滝沢は俺に話かける。
「えっ、ああごめん何?」と考え事をしていた俺は聞き返す。
「なんだぁ?どーした?変だぞ。今日・・。」
「何でもないって、今日はこれから仕事だよ。残念ながら。滝沢こそどーすんの?
最近彼女と連絡とってるの?あんまり会ってないんじゃないの?」
「珍しい・・。お前がそんなこと言うなんて、電話はしてるよ。毎日。」
ふかぶかとかぶった帽子から瞳が見える。楽しそうだ。少しうらやましいと思う。
すると、後ろから、
「僕らファミレス行くんですけど滝沢くんと翼くん、どーします?」
斗真が俺と滝沢の間に割り込んで聞いてくる。
「オレは時間いいけど・・。翼は?」
「ああ、大丈夫。オレも腹減ったし、それくらいなら時間ある。」
4人で、近くの行きつけのファミレスに向かう。

すると「あああーっ」と山Pの驚いた声が響く。
「なに?なんだ?」
滝沢と俺そして斗真は彼の指さした方角を見る。
俺は、そこで少年と楽しそうに笑っている女性を見つける。
「ああ、キャミでデニムのお姉さんじゃん。って翼?」
滝沢に声を掛けられて我に返る。
「何でもない。早く飯食おうぜ。」
俺は斗真と山Pを促してファミレスに入っていこうとする。
「じゃあさ、近く座ろう?声掛けるのはなんか気が引けるし。」
「賛成!!」とふたりの年少組は答える。
「滝沢・・お前・・」
「いいから、いいから。」
俺は嬉しいような何だか不安なような・・。
オレ達は中に入って彼女の隣の席に座った。
とても控えめに目立たぬように・・。


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