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心を開いて・・・第4章
Your dream I believe 
2000年10月
海亜 作


私は何故か動揺していた。
だから、まともな返事が出来なかった。
『私?』
『うん。倫子さんにしか出来ない事。』
私にしか?心当たりが全く無く言葉を失ってしまった。
もしかして・・・告白?それとも・・・
勝手に想像して顔が赤くなってしまった。
すると滝沢くんは
『あっ、何か変な風に誤解してない?』
少し嬉しそうに。でも意地悪っぽく言った。
『ちっ、違うよー。』
私は焦って答えた。
『ごめん、ごめん。ちょっと、からかい過ぎた。
じゃぁ、ハッキリ言います。俺の髪の毛切って下さい。』
『へっ?髪の毛?!』
突然の事というより予想外の答えに驚いて
返事が“へっ?”になってしまった。“は?”でも“えっ?”でもなく。

『“へっ?”って、何か凄い返事だねぇ〜。』
『あっ、ごめん。でも何で?この前まで伸ばす!って言ってたのに。』
『ちょっと気分が変わったの。』
『分かった。って言いたいとこだけど私、道具無いよ。』
『あっ、そっか。』
『知り合いの美容師に聞いてみようか?』
『その人は口堅い?』
何故、そんな事を聞くのだろう。。。

私は以前、一緒に働いてた人で今は独立している
尊敬する先輩。佐喜子さんに電話を掛けた。
すると快い返事が返ってきた。

電車を乗り継いで店に向った。
滝沢くんはベージュの帽子を被るという簡単な装い。
私と少し距離を置いて歩く。ずっと無口なまま。
今や誰もが知ってると言っても過言では無い位の人気。
そうするのは当然の事。分かっているけど・・・寂しい。

彼女だったら・・・

でも、付き合ったとしても、堂々とは歩かないだろう。
自分に迷惑が掛かる事よりも周りの人の事を1番に考える人だから。

そして一時間後、目的地の渋谷に着いた。
場所は人通りが多く目立つところにあり外装はお洒落な感じ。
まさに若者の街にピッタリ。
いつもは若いお客さんで賑わう店内はガランとしていた。
店のドアには【定休日】という札が掛かっている。
『あっ、そっか。今日は火曜日か。』

ガチャ。
店のドアを開けた。
佐喜子さんは奥の方でタオルを裁たんでいた。
だから私達が入って来た事に気付いていない様子。
『こんにちわー』
『はぁ〜い』
佐喜子さんは振り返って、こっちを見た。
相変わらず、お洒落で綺麗な人。

『お久しぶりです。』
『ほんと、久しぶりね。元気だった?』
『はい。この通り、元気です。』
『そっか。良かった。最近、連絡無かったから心配してたの。』
『すみません。新しい仕事が忙しくって。』
『そうだったんだ。どう?楽しい?』
『はい。毎日色んな事が有って充実した毎日を送っています。』
『良かったね。自分の世界が見付かって。』

話初めて5分後。
佐喜子さんは後ろに立ってる滝沢くんに、ようやく気がついた。
相変わらず、天然ボケで可愛い人。
『えっ?知り合いって・・・タッキーだったの?』
佐喜子さんは驚いていた。それは当然の事かもしれない。
TVや雑誌で見ていた人を目の当たりにしたのだから。



―つづく―




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