恋に気づいた夜 第5章 shooting star |
2000年11月 海亜 作 |
数日後、事務所の上の人から呼び出された。 『これは、どういう事ですか?』 数々の写真を見せられた。 『それは・・・』 言葉に詰まる私。 『気を付けて下さい。彼は普通の世界の人じゃないんですから。』 私は厳重に注意を受けた。それは当然の事かもしれない。 彼は普通の世界の人じゃない・・・ 忘れていた訳じゃない。 でも私にとって滝沢くんは普通の人。 今まで接してきてそう感じた。 滝沢くん自身もそう思っていたはず。 それをいつも望んでいたから。 俺は至って普通の人間だよ。 恋する事だって有るし失恋する事だって有るんだから。 俺を変に疎外しないで見て欲しいなぁ・・・ 雑誌の中で、そう語っていた。 その夜。佳子さんから電話が掛かった。 そして滝沢くんの事を話してくれた。 『凄く落ち込んでた。あんな秀くんを見るの初めてで・・・』 写真を撮られた事じゃなく自分のした事を認めてもらえなかったのが悔しい。 そして私に迷惑掛けた事を1番気にしていた・・・と。 『滝沢くんに伝えて下さい。“大丈夫だから”と。』 私は佳子さんにその言葉を託した。 自分で言えない事を分かっていたのかも知れない。 私は彼の為に何をすべきなんだろうか・・・。 今、気持ちを伝えて良い結果が生まれるのだろうか・・・。 私は悩んだ。悩んだ挙げ句、1つの答えを出した。 好きだから離れる。 あの時(彼氏と別れた時)と同じように・・・ そして仕事を辞めた。 それから色々な手続きを終え 佳子さんに最後の挨拶をする為に現場へ向った。 『今まで色々とありがとうございました。 言葉では言い尽くせない程、感謝してます。』 『倫子ちゃん・・・ほんとに辞めちゃうの?』 『はい。もう決めた事ですから。』 『この先どうするの?』 『まだ決めてないんです。これからゆっくり考えます。』 『そっか。また会おうね。約束よ!』 佳子さんは笑って言った。涙ぐみながら。 『はい。』 私も笑って言った。涙を堪えながら。 『あっ。これ秀くんから。』 そう言って紙袋を手渡された。 中には以前貸していた本とクランキーチョコが2枚。 そして綺麗に包装された物が奥底に潜んでいた。 それは手のひらに乗る位の大きさ。 なんだろう・・・ 『あっ、もう少しで本番だから倫子ちゃん見て行ったら?』 佳子さんが言ってくれた。 『はっ、はい。』 そして最後のステージを目に焼き付けた。 ―つづくー
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