恋に気づいた夜 第4章 shooting star |
2000年11月 海亜 作 |
それから数日後。ある歌番組で久しぶりに再会した。 佳子さんは新しいアシスタントの人と話をしてる。 その横には滝沢くん。 少し前まで、その輪の中に私は居た。 声を掛ける事が出来ず時間だけが過ぎる。 『そろそろ帰るわよ。』 新しい先生が言った。 『はい。』 手にした荷物と扉は私の心の様に重かった。 『今度、2人に会えるのは、いつなんだろう・・・。』 後ろ髪引かれる思いで現場を後にした。 と突然、背後から私を呼ぶ声が・・・ 『倫子さ〜ん!』 振り返ると滝沢くんが居た。急いで走ってきた様子。 『あっ、滝沢くん。どうしたの?』 『倫子さんが帰るの見掛けて。でっ、追いかけて来たの。』 『あー!また頼み事でしょ?』 私は笑顔で答えた。 『当たり!あのさ・・・もう仕事上がりだよね?』 『うん。』 『じゃぁ・・・』 そう言ってメモを手渡された。中を開いてみる。 “今夜、○○で待ってる。” 『“待ってる”って書いて有るけど・・・待ってての間違いじゃないの?』 私は笑顔で意地悪な事を言った。懐かしい会話の感触。 『そっ、それは・・・とっ、とにかく待っててよ。じゃぁ!』 そう言うと慌てて戻って行った。 『頼み事って?なんだろう・・・』 手にしていたメモを再度見た。そしてシワシワな事に気づいた。 もしかして・・・これ(メモ)を書いたのは今じゃないのかな? いつでも渡せるように持ち歩いてたの? 私は待ち合わせの場所に向った。 ほんの少しの期待が足取りを軽くさせた。 今日こそは自分の気持ちを伝えよう。そう誓った。 それから2時間が過ぎた。滝沢くんの姿はまだ見えない。 季節は11月も終わる頃。時刻は夜の10:00。 見上げると満天の星空。 『キレイ・・・』 白い吐息が雲のように広がる。 倫子さ〜ん 私を呼ぶ声がした。視線の先には息を切らせながら走ってる人。 『ごめん!遅くなって。』 額に汗を掻いてる。 『ううん。お疲れ様でした。』 一生懸命走って来てくれた。それだけで充分嬉しかった。 『なんで店の中で待ってなかったの?』 『ドアが開く度にドキドキするの嫌だったんだもん。』 何故か素直に言えた。今までは絶対に言えなかった言葉。 自分でも驚いたけど滝沢くんは、もっと驚いていた。 そして黙ったまま、両手で頬を包んでくれた。優しく。 『冷たい・・・』 そう言うと今度は肩を引き寄せ・・・抱きしめられた。強く。 突然の事にビックリして心臓のドキドキが止まらない。 それが伝わるんじゃないかって心配だった。 でも、それはお互いに同じ。重低音の鼓動が私の胸に響く。 『俺・・・離れてみてよく分かった。倫子さんが大切だって事。』 頭上で聞こえる彼の言葉が胸に染みる。 そして肌から伝わる体温が心に火を灯してくれた。 『好きなんだ・・・』 切なそうな声。 『私も・・・』 そう言おうと思った時、無数の眩しい光が突然襲った。 週刊誌のカメラマンに撮られたのだった。 ―つづくー
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