[back]

恋に気づいた夜 第3章
shooting star
2000年11月
海亜 作


それから私達は夕食を共にした。少しお酒を飲みながら。
『今日はどうしたの?』
私は気になってる事を聞いてみた。
『突然の出張。』
『へ〜。サラリーマンは大変だね。』
『そうなんだよぉ。お前は?美容師、頑張ってるのか?』
『今年の2月に辞めちゃったの。今は違う仕事してる。』
彼は驚いていた。
“いつか自分の店を持つ!”
と夢見てた私をいつも応援してくれてたから。
付き合ってた時も、辞めようと思ってたけど言えなかった。
心配させたくなかった気持ちとプライドの高さがそうさせた。

『お前、少し変わったな。柔らかくなった気がする。彼氏の影響か?』
『居ないよ〜彼氏。好きな人は居るけど・・・』
それから私は話した。相手が滝沢秀明という事は隠して。

『好きな人が想ってる人は年下みたいなんだぁ・・・』
それを言葉にして泣きそうになってしまった。
『そっか・・・。でも相手の口から聞いた訳じゃないんだろ?
そんなの分かんないと思うけどなぁ。お前の勘違いなんじゃないか?』
思ってもいなかった事を言われ心が揺れ動いた。
もしかして・・・私の聞き間違い?

『そうだよね。私、確かめもしないで先走ってた。』
気持ちを伝えてみよう。
落ち込むのは、その後からでも遅くない。そう思った。
『あぁ。言葉にして始まる事も有るんだから。頑張れよ。』
『うん。でっ、そっちはどうなの?彼女出来た?』
『あぁ。来年、結婚するんだ。』
『そっかぁ〜。良かったね。』
その言葉を素直に言えた自分に驚いた。
数ヶ月前までは絶対に聞きたくない言葉だったから。

それから私達はよく通った道を歩いた。
あの時と違うのはお互いに違う人の事を想ってるという事。
別れた彼に出会えた事を神様に感謝した。
告白する勇気を与えたくれたから。

それから1週間が過ぎ、2週間が経とうとしていた。
告白のタイミングを逃して気持ちが焦る日々。

ある日の午後。
佳子さんは上の人に呼び出されて留守にしてた。
そして数時間後、佳子さんが暗い表情で戻ってきた。
『倫子ちゃん・・・今日ちょっと時間有る?』
『あっ、はい。』
なんだろう?あんな辛そうな佳子さんを見るのは初めて。

私達は落ち着いた感じの店に入った。
注文した品が届いてから佳子さんが重い口調で話始めた。
『あのね。。。今日、会議が有ったの。』
『はい。』
『・・・今度、倫子ちゃんが。。。異動の対象になっちゃったの。』
『えっ!そっ、そうですか・・・』
突然の宣告。私は動揺を隠しきれなかった。
手にしてたカップの音がガタガタ鳴り止まない。

『上の決定には逆らえないの。ごめんね。』
申し訳無さそうに私を見てる佳子さんの表情が痛々しい。
だから私は言った。
『佳子さんが謝るような事じゃありません。』

帰り道。別れ際、佳子さんは言ってくれた。
私・・・倫子ちゃんと、ずっと一緒に仕事して行きたかった。
その言葉を聞けただけで充分だった。
これから色んな環境で勉強して、いつか佳子さんの様になる。
そう決めた。そうする事で壁を乗り越えようと思った。
でも2人に会う回数が減るという事を考えると辛かった。

次の日。佳子さんに挨拶をした。
『今まで色々教えて頂いて・・・ありがとうございました。私、頑張ります。』
『うん。倫子ちゃんの今後、期待してるよ。頑張ってね。』

滝沢くんには挨拶する事が出来なかった。
雑誌の撮影が有って会えなかったから。
そうして新しい道を歩き始めた・・・


―つづくー




[top]