恋に気づいた夜 第2章 shooting star |
2000年11月 海亜 作 |
今日は楽屋に今井翼くんが来ていた。 私は入るのを、ためらってしまいドアの前で立っていた。 真剣に話してる2人を感じ取ったから。 『なぁ〜。最近どうよ?進展有った?』 今井くんが滝沢くんに尋ねた。 『う〜ん・・・何も無し。でも密かにアピールしてんだけど。』 『その人って鈍感なんじゃないか?』 『そうかもなぁ〜。』 どんな表情なのか壁が邪魔して見えない。 『映画とか誘ってさぁ〜。その後、告白しちゃえば?』 『告白かぁ。。。』 『そう!言わなきゃ分かんない事も有ると思うよ。』 『そうだよなぁ。』 〜呼び出し致します〜 突然、局内放送が流れ2人の会話が聞こえなくなった。 そして終わった後、今井くんの言葉が私の心を突き刺した。 『年下かぁ・・・大変かもなぁ。』 バサッ! 手にしていた本を床に落としてしまった。 それに気付いて滝沢くんが言った。 『誰?あっ、倫子さんか。』 『あっ、これ髪型の本なんだけど・・・目通してくれる?』 『サンキュ〜。』 パタン。 ドアを閉めた。 “好きな人・・・居るよ。” 以前、滝沢くんが言った言葉。 好きな人って年下だったんだ・・・ 突然、現実を突き付けられた。それを信じたくなかった。 でも、私が年上だという事は認めなければならない事実。 次の日の朝。いつもより早く目が覚めた。 そして重い足取りのまま仕事先へ向った。 楽屋に着くと滝沢くんがもうすでに居た。 『おはよう。今日は早いねぇ。』 『あっ、おはよ〜。なんか考え事してたら全然眠れなくってさぁ。』 『・・・そっか。』 年下の好きな子の事でも考えていたの?そう思ってしまう自分。 『なんか元気ないじゃん。風邪でも引いた?』 滝沢くんは心配そうに私を見て言う。 『ううん。』 目を反らして答える私。 『あっ、あのさ・・・明日休みだよね?何か予定入ってる?』 『うん。久しぶりに友達会うの。』 嘘を付いてしまった。 これ以上好きになりたくなかった。近づくのが恐かったから。 『そっか・・・残念。』 『また頼み事?』 『そんなんじゃないけど・・・』 ガチャ! ドアが開いた。佳子さんが現れた。 『おはよ〜。あれ?秀くん?!今日は随分早いのねぇ。』 あれから私は滝沢くんに対して変な態度を取ってしまっていた。 『最近、倫子ちゃん変だよ。滝沢くんと、なんか有った?』 佳子さんは私に気付いていた。 『べっ、別になにも有りませんよ。』 『そう?そうだといいんだけど。。。』 佳子さんは、まだ少し疑っている様子。 自分から告白する勇気も無ければ 相手から告白される望みも無い。 こんな苦しい状況のまま側に居るのは本当に辛かった。 帰り道、そんな考え事をしながら歩いていた。 『よ〜!久しぶり。』 スーツを着て立っている男の人が目の前に現れた。懐かしい笑顔。 『うわぁ〜。久しぶり。元気してた?』 彼と最後に会ったのは・・・10ヶ月以上も前の事。 なのにお互い自然な笑顔で会う事が出来た。 多分、愛情が友情に変わっていただけの事だったから。 ―つづくー
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