恋に気づいた夜 第1章 shooting star |
2000年11月 海亜 作 |
『あのさ。倫子さんって今まで付き合った人居るの?』 滝沢くんが突然聞いてきた。髪の毛をセットしてる最中に。 『えっ?うっ、うん。居るよ。』 私は少し動揺しながら答えた。 『そっか。そうだよね。』 『なんで、そんな事聞くの?』 『いやっ、別に何となく・・・。でっ、何人くらい?』 『3人。でも、本当に好きだった人は1人かな。』 『どんな人だった?』 『凄く素敵な人だった・・・』 それから私は話した。3年間付き合ってた彼の事を。 当時、付き合ってた人は1つ上だったけど精神的に大人な人だった。 彼と居ると楽しかったし、嫌な事、全て忘れられた。 価値観も人生観も合う。まさに運命の人だと思っていた。 でも、彼の転勤を切っ掛けに私達は離れ離れになった。 会える日を指折り数えて楽しみにしてた私達。 そして忙しくても週末の電話だけは欠かさなかった。 でも、楽しみなはずの約束が次第に義務のものとなっていった。 声を聞けば嬉しいのに・・・喧嘩してしまう。 待つ身の寂しさ。待たせてる身の辛さ。それはお互いに分かっていた事。 でも、その壁を乗り越える事が出来なかった。 “別れよっか。” 私から別れの言葉を口にした。 ずっと黙って聞いてた滝沢くんが口を開いた。 『そんなに好きだったのに、なんで?』 『う〜ん・・・好きだったから。凄く好きだったから。』 私は彼の優しい笑顔が1番好きだった。 それなのに・・・それを失わせていた。 『彼は?何て?』 “俺も同じ事を思ってた。” 彼は会いたい時に側に居てやれない自分が悲しかった。 そして彼は最後に、こう言ってくれた。 “お前の笑った顔。好きだったよ。” お互いが自由になる事で本来の良い所を取る戻せる。 彼も、そう思ったんだろう。。。 『別れた後は?大丈夫だったの?』 『情けないけど、全然ダメだった。なかなか忘れる事が出来なくって・・・』 彼との想い出の場所を通る度に涙が溢れ 自分でも、どうしていいのか分からず苦悩する日々。 お互いの幸せの為と思って選んだ道が間違ってたのかな?と後悔する日々。 別れて初めて気付いた彼の存在の大きさを。 『今は?吹っ切れてる?』 『うん。もう想い出す事も少なくなってきた。』 心の傷は時が解決してくれるもの。と人は言う。 だけど私は人が解決してくれるんだと思う。 あの時、佳子さんに会って私は生まれ変わった。 『佳子さんと出会えて良かったぁ〜と思ってる。』 『うん。』 『でも、佳子さんだけじゃないの。』 『誰?』 『秘密!』 『あ〜。そこまで言って秘密なんて・・・酷でぇ〜。』 膨れっ面してる滝沢くん。 今日も色んな表情で私の心を楽しませてくれる。 『滝沢くんは?今まで付き合った人は?』 『あぁ。居たよ。でも俺は・・・』 滝沢くんは静かに過去の事を話してくれた。 あれは本当に好きだったのか?恋に恋してただけなのか? でも、その経験のお陰で今の自分が存在してるんだ。と・・・ 人と人が付き合うのは難しい事だと思う。でも本当は簡単な事。 相手を好きで愛しいという気持ちを忘れなければ。 恋は人を綺麗してくれる。そして愛は人を優しく、強くする。 私はその事に気づいた。滝沢くんと出会って・・・ ―つづくー
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