君を守りたい 第5章 stay with me |
2000年12月 しいな 作 |
「何だって?」 翼が聞いてくる。 Jrのほとんどメインが集まって、コンサートの打ち合わせと リハーサルをしていた。 「なんか、スタッフの人と食事だってさ。いいなぁ、オレも飛んで行きたいよ。 」 なんて、オレは机に向かって突っ伏してる。 「あれー?でも、僕が別のスタッフさんがどっかのホテルでパーティがあるって 聞いたけどな。あと、徹夜で編集だって話してたけど・・。」 山下はそんなことを言った。 オレってば段々心配になってきた。大丈夫かな・・。カンナさん。
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時刻はもう、11時を回っている。 携帯も出ないし、家にも帰ってないみたい だ。 「変だよ。滝沢くん・・。」 そうこんなことは、今までなかった。 そりゃ・・つき合ってまだ2週間だけどさ。 「やっぱり、帰ってないってさ。美果さんが家に行ってみたけどいないって。」 翼が携帯を切っていう。 「とにかく、この間の寿司屋だって言ってたから・・行ってみる。」 みんなも付いて来てくれることになった。 彼女は・・確かに寿司屋にいた。それも男連れだったらしい。 どんな奴か聞いた。知らない奴だ。オレが知ってるスタッフじゃなかった。 「彼女、完全に酔いつぶれてたね。でも、入って30分ぐらいだよ。 その彼に背負わされて出てったね。」 店員はカウンターを拭きながらそう答えた。 「僕・・その人見たことあるかも・・・。」 山下の話では今日の雑誌のスタッフの中にそれらしい人物がいるらしく、 斗真がカンナさんとそいつが話ているのを見たらしい。 「滝沢・・特徴あるから・・わかるんじゃないか?」 翼がオレに向かってそう話掛ける。 オレは頷いて、知っている雑誌のスタッフに、電話をかけまくった。
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「あなたが・・悪いんだよ。僕以外の男とつき合ったりするから。」 頭痛がする。がんがん痛い。 そんな・・島くんの言葉が頭に響く。 「何・・?ここは?」 「僕の家ですよ。あなたは酔いつぶれてしまって。 なかなか僕から離れなかったんです。」 私はソファによりかかっていた。 彼は私に水を差し出す。 私は疑いながらその水を飲む。 「ありがとう・・。私・・帰る。きっと心配してるから・・。」 「滝沢くんですか?」 すると、いままで穏やかだった彼の表情が一瞬にして変わる。 「ゆるせないですね。僕のモノを奪おうとするなんて・・。」 彼は、あるモノを私に見せる。彼と私があの日抱き合った写真。 それをライターで燃やした。 「もしかして・・あなたがいたずら電話の・・!!」 「いたずらなんて・・君の声が聞きたかっただけだよ。なのに、番号まで変えて 。」 私は彼のその形相におびえてしまった。 「君のことがずっと好きだったんだ・・。見てごらん?」 彼はカーテンを引く・・。その向かいには見馴れたマンションが・・。 私の部屋が丸見えだった。双眼鏡でもあれば覗けてしまう距離だった。 私は、動けないでいる。怖い・・。 「ずっとね。ここから、見ていたんだよ。でもね・・。 あいつが来てからは、君の表情とかが違うんだ・・。いつか・・殺してやる。」 島くんの両手が私の両腕にかかる。 「秀くんに何かするつもり?」 「まず、あの、女みたいな顔に傷をつけて・・切り刻んで・・」 もう聞いてられない!私は耳を塞いだ。 「やめて!!」 すると、島くんが後ろから抱きしめてくる。 私はがたがたと震えが止まらない・・。 「好きなんだ。こうやって抱きしめたかった。わかってるよね。」 彼は私の正面に回って言い放つ。 「あいつと別れるんだ・・そして僕のモノになってくれるよね?」 私は首を横に振る。髪を振り乱して必死に彼の腕を振り払おうとした。 「彼がどうなってもいいの?セットに何かすることだって僕には造作もないんだ よ?」 私は後ずさる・・。どうしたらいいの? 秀くんに何かされるなんて・・考えたくない。 ふと、そこにサバイバルナイフが目に留まる。 それを掴んで、自分の首にあてる。 「彼に何かしたら・・あなた殺して死んでやるから・・。」 「やめなよ・・。ちょっと・・」 その時、ピンポーンとインターホンが鳴る。 1LDKの広いマンション、彼が玄関に向かって歩き出す。 「んったく誰だよ、こんな遅くに・・。」 彼の声が聞こえる。どうしよう・・今のうちに逃げ出せないかな・・? ふと、リビングの窓から、黒い影が見える。 何だろうと近ずくとそこには秀くんが立っていた。 私は持っていたサバイバルナイフを置いて、カギをはずしてドアを開ける。 「良かった、無事だったんだね。カンナさん・。」 私は涙が溢れそうになる・・。来てくれたんだ。 おもいっきり彼の胸に飛び込む。 「あのさ・・嬉しいんだけど・・あいつ戻ってくるとやばいからさ・・」 にっこり笑って抱きしめ返される。 私は頷く。そして、そっと外に出た。 「どこから?上ってきたの?」 彼は指をさす。 ベランダのヨコから上手いことに段があってそれで上れるらしかった。 ここは、3階でそんなに危険でもないみたい。私でも降りられそう。 落ちても、骨折くらいですみそうだ。ってそんな問題じゃないか・・。 「ゆっくり、降りてってよ。」 私から先に降りていく。無事に地面に降り立つ。 「カンナさん!!よかったー!!」 斗真くんが走り寄ってきた。 「みんな心配したんだよー。」 「ごめんね・・。まさか・・自分がストーカーに会うとは思わなくて・・。」 見上げると秀くんが見えない・・。 どうしたんだろう? ―つづく―
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