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君を守りたい 第4章
stay with me
2000年12月
しいな 作


「どーしたんですか?」
今日の私の担当はJr.NO1のおしゃれさん。今井翼くん。
「うん、ここしばらく・・寝れなくて・・」
「それって、あいつのせい?寝れないくらい・・」
「翼くんって結構・・Hなのねー。残念,まだプラトニックだよ。」
着替えながら、笑って彼は返してくる。
「男はみんな、多かれ少なかれ狼ですよ。・・で?不眠症?」
私は首を横に振る。
「なんかねー。イタ電と無言電話が多くて。
5分置きとか決まった時間に鳴り出すんだよね。出ると切ったり。無言だったり。」
私はあくびをする。
昨日もほとんど一睡も出来なかった。
「それって、あいつに相談した?」
「ううん、彼、いま忙しいもん。それにあんまり心配かけたくないから。」
「うーん。どーみても異常だよ。滝沢のファンかなー?」
翼くんはそんなことをつぶやきながら衣装を着替え終わった。
「そんな、まさかでしょ?まだ、1週間もたってないんだよ?」
考え込む。その姿が何かかわいい。
「続くようなら、番号換えたら?あと、引っ越すとかさ・・。」
「うん、考えてみる。」
そう言って、最終的に衣装を整える。
翼くんはカメラマンの指示に従い、セットで色々なポーズをとっていた。
そうだなー。番号変えようかな・・。
でも、そしたら理由言わなきゃなんないよね。ああ、やんなちゃうな。



「これ、新しい名刺です。事情があって変えることにしまして・・。」
と会社の上司や同僚に配る。
フリーじゃないから、配らないわけにはいかないもんなぁ。
でも、身近な人たちではないと祈りたい気分。
滝沢くんにはメールで送った。
今頃はきっと翼くんたちと打ち合わせでもしてるころかな。
 30分ぐらいして、携帯電話が鳴る。出ると・・。
「今から、行くから、待っててよ。」
滝沢くんの声だった。少し怒っているように聞こえる。
電話が切れた後、あわてて私はちらかっているところをかたずける。
もしかして・・仕事帰りかな・・。こんな遅くだもん。
お腹空いてるかもしれない。
残ったご飯とあり合わせの物でチャーハンを作った。
作り終わった頃にインターホンが鳴る。はじめてなのに・・早く着いたなぁ。
「はーい!」っと声を掛けて、彼だって確認してドアを開ける。
「いらっしゃーい。」と言おうとしたとき・・。
いきなりドアを開けた途端、強く抱きしめられる。
「滝沢くん・・?」
「何で、何も言ってくれないんだよ。」
「ごっ、ごめん・・心配かけたくなくて・・。でも、大丈夫だよ。
今日は1本もかかってこなかったから・・。ご飯作ったけど・・食べる?」
彼はためいきをついて、にっこり笑った。しょうがないなって感じで。
「うん。」
私もその笑顔で嬉しくなって笑った。



 「カンナさん、今日空いてます?」
月刊のアイドル誌のスタッフの1人が声を掛けてきた。
彼とは何度か仕事で会ったことがある。
一見今時の若者って感じで細身のサングラスをしている。
でも、名前も良く知らない。話もするのもはじめてじゃないかなぁ。
「あの、誰だっけ?」
「やだなぁ。島 一樹ですよ。照明でアシスタントやってます。」
そうゆうけど、知らないよ。と思いつつ・・さらに聞いてみる。
「今日は、みんなで飯でもどうかって、カンナさんも誘うって話になって・・。」
「ふうん・・。いいよ。場所どこ?」
今日は、秀明くんは仕事で遅くなるって言ってたし。
そろそろリハーサルも始まるって今日の山下くんの取材でも言ってたみたいだ。
たまにはおつき合いも大事よね。私は彼に場所を聞いてメモった。



 「ここって・・。」
「来たことあるんですか?結構旨いんですよ。」
知ってるよ。だって、この間みんなで来たお寿司屋さんだもん。
偶然ってあるんだねー。
「みんな、遅いよね・・。誰と誰来るっていったっけ?」
彼は名前をあげる。
皆、お世話になってる人たちでこれはちゃんと接待しなければっと力が入る。
私と島くんは先に入っていて座敷に通される。
さきにビールやお酒を頼んで、お寿司も4,5人分握ってもらった。
「どーしたんだろう。お寿司余っちゃうよ。ビールだって・・。」
その時、私の携帯が鳴り出す。出ると、秀明くんだった。
「今、どこにいるの?誰かと一緒?」
「うん、雑誌のスタッフといっしょ。これから、ご飯食べるの。秀くんは?」
「これから、リハーサルの準備なんだ。遅くならないうちに帰ってよ。」
彼はちょっと心配そう・・もう。23歳で大人なんだからね。
「わかってるってば。あそうそう、ここね、この間のお寿司やさんなんだよ。
偶然だよね。じゃ、またね。」と言って携帯を切る。
「今のって・・彼ですか?」
「えへへ・・。そうだよ。って君も飲んだら?それにしても遅いなぁ・・。」
私はお寿司片手にビールを飲んでる。
おごりだと容赦なく食べまくる。
「彼って・・。滝沢くんでしょ。Jrの。」
「え!?何で・・知ってるの?」
Jrのごく1部の彼の友人しか知らないはずなのに・・。何で?
ふと・・。私はめまいをおぼえる。
やだ・・。まだ・・ジョッキの半分も飲んでないのに・・。回りが早い・・。
「知ってますよ・・。抱き合ってキスしてましたね・・。
この間は彼と一夜を過ごしてました。知ってるんですよ。
僕は何もかも・・。あなたのことなら・・。」
私は・・そのまま・・意識を失ってしまった。


―つづく―




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