瞳で殺せ!!第7章 when I sit by him |
2001年9月 しいな 作 |
今日は、別の雑誌の取材で滝沢君に会える。 6日ぶりだ。ロンドンのことも・・もう返事ださないとな。 明日・・トオルさんは、行ってしまう。私は・・付いて行った方がいいのかな。 トオルさんと・・仕事は・・別だ。 でも、滝沢くんを忘れるために逃げ込むようで 何か・・違うような気がする。 先にスタッフが準備を進めてる。私も作業に取りかかっている。 「みはるちゃん・・なんか・・目が・・少し変だよ。」 あっ・・やばい・・大分良くなったのに・・まだ・・腫れてるかな。 昨日も泣き通しだったから・・。 涙が止まっても・・なかなか腫れぼったいのが治らなかったんだよね。 他のスタッフにも言われる。恥ずかしい・・。 そんなとき・・この撮影の主役がやってくる。 「滝沢くん、おはよう。」 私が声を掛けると彼が振り向く。私を見ると目を見開いて返事をする。 「ああ・・みはるさん・・おはよう。・・目・・どうしたの?」 心配そうに私を見つめる。ああ・・なんてきれいな瞳。 「うん、ちょっと。なんでもないの。」 と笑っていうと・・ふと彼は「そっか・・。あのさ。」と鼻を触るしぐさをして 話し出す。 その表情は、少し緊張しているようで・・いつもと違うような気がした。 「ん?どうかした?」 「あとで・・時間あるかな・・話したいことがあるんだ。」 「ふ〜ん。いいけど・・何?」 何よ・・気になっちゃうじゃないの。 彼は、帽子とサングラスを外して「後でね・・ここじゃね。」と回りのスタッフを 見て私を見て笑う。 私と滝沢くん、数人のスタッフがメイク室で準備してる。 彼にメイクをしていく。男の子だからそんなに塗らなくていいんだけど、 滝沢くんは・・また特別よね。 ああ・・手元狂いそうだわ。 やっぱり・・彼の瞳に弱いんだよなぁ。髪もセットする。 このサラサラな髪もクラクラするほど美しい横顔も見られなくなるなんて 考えられないな・・。 今日は、時間も長くて休憩も挟む予定だった。 私は・・どうしたらいいんだろう。真剣な表情、憂いを含んだ表情、 明るく元気な 表情・・いろいろな彼を見つめながら・・私は、ある事を考えていた。 撮影は・・中盤を迎えて休憩に入ることになった。 その時、私の携帯が鳴り出す。シンプルな普通の着信音。 「もしもし?」 と出ると・・「よっ!オレ。」と明るい声が耳元に届く。 「ああ・・トオルさん・・。」 ふと・・何んとなく・・視線を感じて・・その方向を見ると・・。 滝沢くんが・・私を見ていた。私と視線が合うと・・口元が開く。 「あ・と・で・ね!」と静かに微笑んだ。目元が優しい。 私は、うんと首を縦に振る。顔が熱くなる・・また、思わず目をそらしてしまう。 『こら!聞いてんのか。』 と・・怒ったような声が聞こえて来た。 「ああっとごめんなさい。仕事中なんですよ。」 私は、物陰で受話器に向かって話す。 『決めたか?行くだろ・・もちろん。』 私は、ゆっくりと息を整える。 「トオルさん・・その話なんだけど・・断ろうと思って・・。」 私は、さっきまで滝沢くんを見つめながら考えていた事を淡々と話して行くと・・ トオルさんは無言になった。 「確かに・・良い話だと思うんだ。自分の腕もためせるだろうし、もしかしたら 仕事の幅も広がると思うんだけど。だけど・。」 向こうでためいきが聞こえる。呆れてるかもしれない。 『 そんなに・・あいつが好きか?わかってるのか?アイドルなんて先もわからない奴 好きになってどうすんだ。 おまけに・・年・・いくつ離れてんだよ。 あきらめろよ。一緒に来いよ。オレが側にいてやるから。』 優しい声・・嬉しいけど・・違うんだもん。 「だからだよ。きっと甘えちゃうよ。 トオルさんが側にいたらきっと甘えてしまってだめだよ。あとね・・逃げるようで・・いやなの。」 ふと、遠くで私を呼ぶ声が聞こえてきた。 『 逃げる?何に?』 私は、手を振って「今行くから。」と合図する。食事の用意が出来たらしい。 「今の仕事も満足してないし・・。彼からも逃げるようでいやなの。 だから、ごめんなさい。一緒に行けないです。」 私は、さっきまで悩んでいたのが嘘のようにきっぱりと断った。 『そうか・・残念。2年前・・連れて行けば良かったんだな。』 「でも、仕事の面でもしかしたら・・またお世話になるかもです。 その時は、 力を貸してもらえませんか?我が儘言ってごめんなさい。」 私は、正直に気持ちをはなす。 『図々しい奴だな。まぁ・・いいや。OK遠慮なく言えよ。」 くすくすと笑いながらそう言った。 「明日・・出発ですよね。見送りに行きますから。」 『おう!ああ・・そうだ・・あいつさ・・。』 ?何だろ。あいつって・・滝沢君?私は・・さらに耳に神経を集中する。 『 いや・・いいや。そこまでしてやる・・義理もないしな。』 と言いかけてやめる。何?これも気になるじゃないの。 「トオルさん?」 『ああ・・じゃ・・明日な。』 あっ・・ちょっとって言う前に切られちゃった。 何を言おうとしたんだろう。むなしい・・音が聞こえる。 まぁ・・いいか・・明日聞けば・・。 私は、携帯を切って食事をしに休憩室に向かった。 食事をした後、メイク室に向かう。滝沢くんがいるはず。 あと20分くらいで休憩時間も終わりだから準備をしなければならない。 休憩の間も彼は、雑誌などのインタビューやコメントの取材をこなしていたらしい。 ご飯・・食べれたのかな・・などと思っていると、滝沢秀明様≠ニ書かれた 紙が貼ってあるドアの前に来た。 ノックをして「滝沢く〜ん。」と声を掛けながら部屋に入った。 まだ、他のスタッフは、戻ってきてない。 部屋の広さは10畳くらい。鏡が並んでいる。 鏡にちょっと頭が映ってる。その方向を見ると少し段になってお座敷みたいに なってる。 テーブルを少し寄せたみたい。クッションを枕にして仰向けに寝ていた。 Tシャツ一枚とジーンズ・・足下は・・素足。 私は、段になってる所に座る。 ちょうど・・滝沢くんの頭から少し離れたくらいだ。 仰向けだから・・顔が覗ける。おおっ・・特等席。 気持ちよさそうに・・寝てる。昨日も夜遅くまで起きてたの? それとも・・ドラマはなくても忙しいのかな。 なんて思いながら・・じっと見つめてしまう。 額に・・伸びた前髪が掛かっている。 思わず・・手をそこに近づけていく・・邪魔そうな長めの髪をはらった。 ふと、起こしちゃったかな?とすかさず手を引っ込めたけど・・。 彼は少し眉を動かしただけで再び静かな表情になる。 側にいるだけで・・ドキドキする。 やっぱり・・好きだわ・・君のこと。 心の中でつぶやく。伝わらない思い・・伝えられない気持ち。 どんどん・・溢れてくる。泉のように・・湧き出てくる。 端正な彼の顔を見ていたら・・私は・・押さえることが出来なかった。 気持ちよくつかの間の睡眠を有意義に過ごしている・・彼・・滝沢くんの 唇を・・そっと奪ってしまったのだ。 神様ごめんなさい・・頭の中で懺悔する私。 「ごめんね・・。」 ・・と呟く。起きなくて良かった。嫌われるかもしれないもん。 そして、近くにあったタオルケットを掛けようとしたとき・・。 「何で・・謝んの?」 ・・びくん!! 私は、飛び上がる程驚く。 えっ?えっ?滝沢くんの低めの甘いハスキーボイスが部屋に響いた。 ―つづく―
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