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瞳で殺せ!!第5章
when I sit by him
2001年9月
しいな 作


撮影が終わって・・休憩に入ることが出来たのは、お昼をかなり回った後だった。
あれから・・4日・・私は・・すご〜く悩んでいた。
佐見さんとロンドンに行くか・・。あと・・3日かぁ・・どないしよう。
滝沢くんは・・どうしてるかな。
別に・・翼くんから聞いてもなんとも思ってないか。(悲)
今日は・・久しぶりのお休み。私は・・久しぶりに髪を切りに職場に行こうかなぁ。
あと、買い物もしたいし・・部屋を出ると・・。
「よぉ!デートしようぜ!」
マンションの前に派手なスポーツカーが止まってる。(げ・・原色だ・・。)
そこに寄りかかっているのは・・佐見さんだった。
私は・・びっくりして階段を下りていく。
「何してんの?!」
「待ってたに・・決まってんじゃ〜ん。さ・・乗った乗った。」
私は・・強引に助手席に押し込められ・・連れ去られた。
「ちょぉっとぉ!何するんですか!せっかくの・・休みがぁ・・。」
私が・・がるるると佐見さんを睨んでると「まぁまぁ。」と笑ってる。
「そのカッコだと・・美容院も行くつもりなんだろ?オレが切ってやるよ。」
えっ・・・私が何も言わないでいると。
エンジンを掛けて発進する。そして彼は、元の勤め先である・・美容院へ向かった。
私の・・職場でもある。駐車場に車を止める。
「この車・・佐見さんの?派手だよね・・・。」
私は・・あまりのスピードで怖かった・・。100キロは・・軽く出てたような。
「ああ・・しばらく・・友達に預かってもらってた。相変わらずういやつ。(はあと)」
とボンネットをウットリと眺めてる。変な人・・。
「さて・・行きますか。」

私と彼は、CLOSEと札の掛かったドアをお構いなしに入っていった。
予想通り数人のスタッフがいた。
「あれぇ?みはるさん・・今日・・休みでしょ・・あれ?佐見さん!!」
3人いた子たちは、彼に注目。
「お久しぶり〜〜。ちょっと場所貸して貰っていいかな〜?」
まったく・・驚かせるの大好きなんだから。
私は、道具を準備して袖付きケープを自分で付ける。
そして、イスに座った。
「さあて・・どうする?」
鏡越しに私の両肩に軽く手を置いて聞いてくる。
「おまかせしま〜す。」
回りのスタッフも興味津々。私も・・ちょっとドキドキ。
「いいのかな〜?どうなっても知らないよ?」
とかなんとか言いつつ馴れた調子でハサミを入れていく。
伸びすぎた私の髪は・・軽くなっていく。
途中・・軽くパーマを掛けたりカラーリングも施されたり・・結構真面目に やってくれた。
相変わらず・・いい腕してるなぁ・・。
さらに、メイクもしてくれる。
「みはるさん・・変わりましたね〜素敵です〜。」
アシスタントの女の子が私を見て言う。確かに・・化けてる。
さすが・・魔法の手を持つ男・・。
なんか・・今までの私の仕事が軽く見えたりして。
私・・アシスタント務まるかな?とっても疑問だわ。自信がゆらぐな・・。
「どうですか?気に入ってもらえたかな?」
肩より下まで伸びていた髪が肩に付くくらいまでになって軽くパーマが掛かってる。
軽い軽い・・。私は、頷く。ほんとに・・匠の技で・・。
「おっし・・そしたら・・デートしよう!」
っと腕を捕まれ拉致される。3人のアシ君たちは・・呆然としていた。

建物を出た後・・さっきの車に再び押し込められる。
「ちょっと・・トオルさん・・どこ行くの?」
また、怖い思いをしつつシートベルトに掴まってると。
「そうだな・・そんなラフなカッコじゃ気分も出ないから・・。」
そう言うとエンジンを掛けて発進。
しばらく走り続けていると「なぁ・・。」とちらっと私を見る。
「例の件・・考えてみたか?」
「考えたけど・・悩んでまっす。以上。」
私がそう答えるとトオルさんは、「ほ〜。」と答えるだけだった。
そして・・着いたところは・・2年前にも連れてきて貰った事がある・・。
セレクトショップだった。
「トオルさん?私、困るんだけど・・。」
「いいから・・何か欲しいのあるだろ?」
また・・腕を掴まれ・・強引に店に連れて行かれた。
欲しいというより・・着せ替え状態で私は・・リカちゃん気分だった。
結果は・・全身トータルでコーディネート。
Tシャツにパンツだったのが・・ノースリのブラウスにきれいな色のスウェードの スカートという出で立ちに変わってしまった。
「おお!いいじゃん。よし、このまま飯食いに行こうぜ。」
久しぶりの・・スカートだった。
鏡に映る私・・自分で言うのもなんだけど・・いつもよりイケてると思う。
ふと・・こんな私を滝沢くんは・・どう思うかな・・。
なんて・・彼のことを思い出してしまった。

食事は、イタリアンだった。
高級までは行かないけどオシャレで有名な レストランだった。
そこで・・遠慮もなくお腹がパンパンになるくらい食べて ワインも飲んでちょっといい気分。
「今日は・・ごちそうさまでした。久しぶりのごちそうでした〜。」
海の見える公園。私とトオルさんは・・夜風に当たってる。
回りはもうとっぷりと日が暮れていて街灯が灯っている。
う〜ん・・回りはカップルだらけだなぁ。
・・とまた、思い出したりして・・あの笑顔と優しい瞳・・会いたいなぁ。
「なぁ・・ロンドン行きだけど・・実は、チケットもう予約してあるんだよな。」
トオルさんは、タバコをくわえてzippoのライターで火をつける。
「えっ・・聞いてないよっ。」 タバコをふかして口から煙りが吐き出される。
「2年前は・・連れて行けなかったからさ。」
私は・・ほろ酔い気分が一気に覚める。
トオルさんをじっと見てしまう。
「お前さぁ・・あいつのこと好きだろ・・。」
「えっ?あいつって?」
思わず・・しらばっくれる私。トオルさんは、にやっと笑う。
「ほら、滝沢ってアイドルだっけ?かなり人気あんだろ?隠すなよ。
お前のことなら、結構わかるんだぜ?」
まだ、長いタバコを捨てて足で火を消した。
私は、柵によりかかりながらそれを見ていた。頷く私だった。
「あいつのこと・・真剣なのか?だから・・渋ってるのか?」
「真剣って・・私の片思いだよ。滝沢くんは・・そんな風には思ってないよ。」
私は、諦めてるつもりだけど・・なかなか上手く忘れられないと彼に言った。
「分かってるんなら・・一緒に来いよ。近くにいるからダメなんだって。
だから・・一緒にロンドン行こうぜ。お前なら向こうでもやっていけるさ。」
いつのまにか・・すぐ側にトオルさんがいる。
肩を抱かれる。そして・・昔だったら・・2年前だったら受け入れていただろう・・。
寄せられた顔にバッグを押しつける。
  「みはる・・あのなぁ!!」
拒まれて・・彼はむっとする。
「だからってトオルさんとはどうにもならないよ。私の中では終わったことだから。」
私は・・走りだしてトオルさんに手を振る。
「今日は、ありがとね〜。これ後で返しに行くから〜!」
私は来てる服を指さして・・そう叫んでその場を後にする。
呆然と立ちつくすトオルさんを残して・・。
別れた後・・目から涙が出てきた。
やっぱり・・諦めなければならないんだよね・・。
ロンドンに行った方がいいのかな・・滝沢くんを忘れることが出来る?
もう・・化粧もぐちゃぐちゃだった。
明日は・・きっと目が腫れちゃってるだろうなぁ・・。
私は、アツアツカップル達のヨコを通り過ぎながら、駅に向かって歩いて行った。





―つづく―




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