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笑顔の行方 U____ 第3章
2001年1月
しいな 作


今日はドラマの撮りも終わって、ガキバラのロケでバンの中にいる。
相手のJrは、すばること渋谷すばる。
内容もカップルの話題で・・。
「ええなぁ。彼女欲しいわ。タッキーはおらへんの?」
少しきつめの瞳っぽい感じだけど、柔らかい表情でオレに聞いてくる。
「そうゆう、お前は?」
「オレが聞いとるのに・・。おるけどなぁ・・。遠いねん。彼女やないで。
好きやねんけど、なかなか会われへんねん。」
すばるは、その彼女のことを思い出しているのか、長い髪を掻き上げて窓の外を 見る。
そして、すかさず「せや、あんたはどないなの?」と聞いてくる。
「オレは・・。」
オレの心は決まってる。
好きな人は日向さん。
この間は、さっさと帰ってしまった。
まぁ、次の日も早くから仕事だし、オレと 翼に 気兼ねしたのかもしれない。
会いたい・・。
ふと・・出会った時の彼女を思い出す。
酔って泣き出す彼女、オレにしがみついて眠った彼女。
「次・・○○に行きますから!」
スタッフのその声でオレは我に返る。
「その声だと、おるんや?好きな子。どんな子?可愛ええ?」
にこにこと笑顔で好奇心旺盛にそう言ってくる。
オレは照れくさくて・・頷くだけだった。
信号機が赤で車が止まった。
ふと、オレは車の外を見る。
カラオケボックスに入って行く 男女を見かける。
そこに見たことのある人物が混ざっていた。
「日向さん?!」
オレがそう呟くとすばるが「何?」と外を覗く。
いつも、ラフな格好を見てるから、一瞬わからなかった。
立ち止まって、他の女性やスーツ姿の男達と話をしている。
黒のニットに黄色のマフラー、チェック柄のスカート。
足下はブーツで化粧もしてる。
髪型もこの間会った時とは全然違う。
「どの人?おぉーっ!大人や・・年上かぁ・・。」
すばるは、やるうとオレをこづく。
そんな、すばるの相手を出来るほど今のオレには余裕がない。
オレは・・不安で一杯になってる。
あんな風に着飾ってる彼女を初めて見る。
最初に会ったときも割とカジュアルだったし、化粧も涙で流れたみたいだったか ら・・。
すっぴんみたいなものだった。
そして、彼女は数人の男女とカラオケボックスに入って行った。
「タッキーもしかして・・気になっとる?」
頷く・・オレ。
ざわざわと嫌な想像をしてしまう。
そんなことを色々と考えるていると、信号が青に変わって車が発進する。
ああ〜〜っ!!
「今日のロケ・・早く終わるとええんやけど・・。」
すばるの声が空しく聞こえる・・。
それからのオレは気になって×気になって仕事もミスしそうだった。
どうしよう・・やべぇよー。



「こちらは、小沢日向さん。レコード会社勤務です。」
と翔子は私を男性達に紹介する。
集まった女の子達は私も含め翔子の知り合いば かりだった。
何度か会った子もいる。
みんな・・気合い入ってるなぁ。
相手の男性達は、翔子曰く、3高な人達。
高学歴、高収入・・の高づくし。
もしかして、3高何処じゃ済まない人もいるかもね。
見た目も、爽やか系あり、モデル系アリとレベルが高いんだって。(翔子談)
今日は、5×5の合コン。
私はもちろん初参加。
それも・・こんな高そうなお店 で。
私は紹介された後・・「こんにちわ。」と普通に挨拶する。
すると、隣にいた翔子が肘でつついてくる。
「もうちょっと・・愛想良くしなよ。」
と小声で言われる。
だから、最初から面倒だって言ってるのに・・。
「小沢さんって・・○○中学に通ってなかった?」
ひとしきり、自己紹介のあと向かいの男性が私に聞いてきた。
私が頷いて、「そうですけど・・。」と言うとにっこりと笑う。
「僕のこと憶えてない?3年の時同じクラスだったんだけど・・。」
・・?名前なんて言ったっけ?彼は、名刺をくれる。
三浦一大≠ニ書いてある。
某有名商社勤務って書いてある。
私の脳裏に学生服のある人物が映し出される。
「あっ!生徒会長!!うわぁ、懐かしい・・元気だった?」
私は、明るくでかい声でそう言った。
「そっ!そっちこそ!いやぁ・・わかんなかったよ。名前聞くまで・・。 それにしても、きれいになったよなぁ。」
細身の眼鏡を掛けた爽やか系の好青年って感じだ。
あのまんま成長したみたい。
「まーた、お世辞でしょ?あっ、そうだ。○○くん元気?」
なんて、昔の話に花が咲いてしまった。
それを見ていた翔子はにんまりと私を見て言ってくる。
「ふふっ。いい感じじゃないのう?このこの!」と頬をつついてくる。
そんなんじゃないって!と笑う。
だって昔のクラスメイトだもんね。
それから、食事の後カラオケへと流れる。
10人の男女が並んで歩く。
近くのカラオケBOXに入る。
ひとしきり歌ったり飲んだりと騒いだ後、化粧を直すためにお手洗いに行こうと 席を起つ。
入って鏡を見る。
化粧が少しとれている。
バッグの中から化粧道具を出そうとかき回す。
ふと・・手に触れた物を取り出す。
滝沢くんからあずかったMDだ。
そう言えば・・どうしてるかなぁ。と彼のことを思い出す。
私・・何してるんだろう。
鏡を見て化粧を直していく。
最後にリップを塗って、みんなの所に戻る。
みんなはさらに盛り上がっていてアルコールの匂いとたばこの匂いが充満してい る。
「日向っ!ここ!何歌う?」
翔子がそう聞いてくる。
相当出来上がってるな・・。
「あのさ・・。私・・帰るから・・。」
彼女にそう大きい声で耳元で言う。
「えっ?何言ってんの?これからでしょうが?」
目が据わってる。大丈夫かな。
時計を見ると11時は済んでる。
私は、「ゴメン」と謝って荷物を持って、他の人にも謝る。
「日向ーっ!!もう誘わないからねー!ばかー!」
大声で叫ぶ。
バカはないでしょうに・・。
今度埋め合わせするから・・。
「本当に、ごめーーん!またねー!」
私は、翔子に手を振りその他の男女に頭を下げてカラオケBOXから出る。
そして、駅に向かってダッシュしようとまさに走り出そうとしたとき・・。
後ろから・・声を掛けられた。

―つづく―


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