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リース 雪のクリスマス・・・・・ 6夜 リース
2000年12月
海亜 作


サンタととなかい

クリスマスイブ

それから電車に乗った。
もうすっかり涙も止まり、少し落ち着いた自分を取り戻した。

改札を出ると朝とは違う雰囲気に驚いた。
歩道の隅、行き交う人の傘、店の屋根に白く積もった雪。
そして蛍のように密かに輝いてるイルミネーション。
キレイ・・・。
その光景に、しばし見惚れていた。

街灯がともる頃に 
降る雪が少し 粒の大きさ増した
さっきから 
もう首が痛くなるくらい 見詰めている空


そして、ケーキ屋さんの前を通り過ぎた。
店先に貼ってあるポスターを見た。
美味しそう・・・。
あっ!そうだ。
私は、急いで店に入った。

『すみません。ケーキ下さい。』
『ごめんなさいね。1時間程前に最後の1つが出ちゃって・・・。
シュークリームとかプリンなら有るんだけど。』
『あっ、結構です。』
ここのケーキの事は雑誌にも載っていて、かなり有名。
だから、仕方の無い事。
いいなぁ〜。最後の1個を買った人。
私は肩を落として店を後にした。

さっき入った店で流れていた曲が頭から離れない。
口ずさみながら公園の前を歩いていた。
降っていた雪も、すっかり止んでいた。
傘を閉じて雲間から覗く星を見た。
サンタクロースが存在するならプレゼントはただ1つ。
“彼の温もり”

そして天に捧げるような気持ちで歌い始めた。

私が見えているものすべて 
大好きな あなたにも 見せたい


この澄んだ夜空・・・一緒に見たいな。

『へ〜。なにを見せてくれるのかなぁ〜?』
そう言った人を見ると・・・

『えっ!どっ、どっ、なっ、なっ、☆○▼・・・』
焦って言葉が上手く出て来ない。
『なにカミカミになってんの?』
笑いながら言う彼。
『だって、きゅっ、急に・・いっ、居るんだもん。驚いちゃって・・・。』
『って言うより嬉しい?』
『・・・うん。』
『なんか、素直じゃん。』
『・・・そう?』
『それに、静かだし。』
『・・・うん。』
自分でも口数が少ないのを感じていた。
今度会えた時に言おうと思っていた言葉が
突然、目の前に現れた事で全て忘れてしまっていた。

『あのさ、なんでここに俺が居るの?って思わない?』
確かに・・・。
でも私はまだ放心状態から抜けられないでいた。
言葉が見付からず呆然。

すると・・・えっ!?
あの時と同じ感触。短く甘いKISS。そして少し冷たかった。
『また、目開けてる。』
私は恥かしさのあまり下を俯いてしまった。
『どうしたの?今日の倫子さん、変だよ。』
『ごめんね。滝沢くんの顔を見たら胸がいっぱいになっちゃって・・・。』
そう言うのが精一杯。
そんな私をじーっと見詰めている。
『やだ・・・。そんなに見ないでよ。』
そう言っても目を反らさない彼。

その視線に耐える事が出来ず背を向けてしまった。
『もぉ〜、私ね。会えないと思ってたから・・・
なんか今のこの状況が幻のような気がして・・・
だから、信じられなくって、夢じゃないかって・・・
さっき、サンタクロースにお願いしたんだけど
そんな居る訳ないじゃん!って感じなんだけど、
願いは届いたような、でも、でも・・・。』
訳の分からない事を空に向って言った。
涙が零れないように。

すると目の前に真剣な眼差しの滝沢くんが・・・。
『目瞑って。』
『えっ?なんで?』
『いいから。』
優しい口調。そして温かい表情。
私は、ゆっくり目を閉じた。

そして・・・あっ!?
あの時以上に、切なく、長いKISS。そして温かかった。
『どう?落ち着いた?』
『うん。』
唇と唇が触れる。
だたそれだけの事なのに、こんなに落ち着くなんて・・・不思議。

気持ちが動いて行く
好きと言わずにいられないほど・・・


『でも、まだ信じられないって顔してる。』
そう言うと今度は力強く抱きしめてくれた。
温かい・・・。体も心も。
『これで大丈夫だよね?』
『うん。』

不安な気持ちが雪のように溶けていく・・・。
『好き・・・。大好き。』
『俺も。』

この夜をあなたにも見せたい
降りしきる雪の中で I LOVE YOU

あなたと出逢えた事が今年の
最大の宝物 最大の宝物・・・

merry Christmas to you
merry Christmas to you


―つづく―




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