涙のあとは 第7章 my brother |
2000年10月 しいな 作 |
なんで?翼くんがここに?今レッスン中じゃないっけ? 「なんだよ、お前誰だ?どっかで見たことあるな? まぁいいや・・。ムカついてたとこだ相手してやるよ。」 「きゃー!やめてよっ!」 洋介は翼くんに殴りかかる。 洋介のストレートが翼くんに入る。 かっ、顔に傷がついちゃうよー。 「うっ!痛ってぇ、商売道具に何するんですか?倍にして返しますよっと。」 でも、それからは身のこなしが違うのか翼くんのこぶしが2,3発洋介の顔に当たった。 私はハラハラしながら人を呼ぼうかどうか悩んでいた。 「おいっ!何やってんだー!翼っ!!」 聞き覚えのある声。滝沢くんだった。 その声に2人は一瞬止まった。 ビックリしたのは洋介だった。 彼の顔を見た途端、口をぱくぱくさせている。 滝沢くんは2人の間に入って翼くんを後ろに隠す。 「おい、蒔・・どーいうことだ?Jr?」 「なんで、こーいうことになったかは知らないけど、この場は納めてもらいませんか?」 滝沢くんは洋介に向かって言う。 それはもう凄みさえ感じてオーラを放っていた。 「もう、わかってると思いますけど、オレ達はジャニーズのタレントです。 商品に傷を負わされたと分かれば、うちの事務所が黙ってないですよ。」 怖い・・。滝沢くん。あながちウソじゃないかも。 これで・・もし・・洋介が滝沢くんにまでケガをさせたら・・。考えるだけでも怖い・・。 「洋介・・やめてよ・・彼は関係ないんだよ。」 「関係なくないだろーよ。わかった・・ま・・俺もバカじゃないしな・・。 やめるわ。でも、お前のことはまだ終わってないからな・・。」 捨てぜりふを残して去っていった。 「翼くん・・ごめんね?大丈夫?」 唇が切れて、少し腫れてる。 私はカバンからハンカチを出して彼の口元を押さえる。 「痛っつう、大丈夫だから・・あ・・そのハンカチ・・。」 あれ・・、翼君が貸してくれたハンカチだった。 「ごめん・・返そうと思って・・また汚れちゃったね・・。」 すると、咳払いが聞こえる。滝沢くんだ・・。 「あのさー。いい感じで悪いんだけど・・先生来てるんだけど・・慌てた方がよくない?」 そう、少し呆れて私たちを見つめる。 「しかし、その顔じゃなー。喧嘩しましたってバレバレだしなー。」 私はひらめいて滝沢くんになんとか10分だけ時間をくれるように頼んだ。 「いいけど・・それ以上は無理だよ?じゃ、まかせたから・・」 そう言って走り去っていった。 「あのさ・・」 翼くんが何か言おうとする。でも私はにっこり笑って言葉をさえぎる。 「大丈夫、まかせて。これでも、一応プロめざしてるんだから・・」 私はカバンからあるものを取り出した。 その後、私は翼くんにメイクをした。 ちゃんと消毒して、傷口を隠した。 そして、大事なコンサートのレッスンも無事に終わった。 上手く隠したなー。プロ目指してるんだ。」 滝沢くんは翼くんの口元を触る。彼は痛がっている。 「でも、メイク道具持ってて良かったー。バイト先からそのまま来たから。」 すると、翼くんは私の顔を見る。何か言いたそうだけど。 「ごめんね。あいつが元カレなの。幼なじみでもあるんだけどね。」 ここは近くの公園。翼くんと私はベンチに座ってる。 滝沢君は突然鳴り出した携帯をとりだし話をしている。 「背高くて、格好いい人でしたね。モデルみたいだった。大人の男って感じ?」 翼くんは本当にそう思ったのだろう。淡々とそう聞いてきた。 「うん。そうなの。だからさ・・モテるんだ、あいつ。浮気っぽくていつも女の子 連れて歩いているの。 だから・・私からバイバイしたの。あの時・・。」 私は翼くんが貸してくれたハンカチをバッグから取り出す。 「あの時・・?」 「うん、翼くんがハンカチ貸してくれたでしょ?すごい嬉しかったの。 そのおかげかな、いっぱい泣いてすっきりしたの。」 「そーなんだ・・。」 何か照れてるのかな?顔が赤いかも・・。 そして、滝沢くんが声を掛けてきた。 「お邪魔みたいだから、俺帰るから。2人ともごゆっくり。」 と言って走って行った。 公園の入り口の方に髪の長い綺麗な女の子が立っていた。 彼女は滝沢くんに手を振り、私たちに会釈する。 そして2人は仲良く並んで歩いていった。 「彼女いるんだねぇ。うらやましい。っと別れたばっかで何いってんだろうね!」 あははは。と笑って翼くんに話しかける。 すると、さっきまでほんわかした感じの翼くんじゃなくて、真剣な表情になってた。 「翼くん?」 ―つづく―
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