心を開いて・・・ 第1章 Your dream I believe |
2000年10月 海亜 作 |
9月に入り、ようやく秋らしくなってきた。街も道行く人の装いも。 今日は秋からリニューアルした番組の収録があった。 『あの髪型もなかなか良いわよね〜。時代の最先端を行ってる感じ。』 佳子さんはモニターに映った滝沢くんを見ながら言った。 『そうですね〜。』 少し照れながら答えた。 自分が言われた訳でもないのに。 『最初見た時ビックリしたけど。倫子ちゃんも思わなかった?』 『えっ、あっ、はい私も驚きました。でも慣れちゃいましたね』 私は慌てて答えた。 『秀くんったら、どこで切ったのか教えてくれないのよ。うぅ〜悲しい』 佳子さんは、いつの間にか秀くんと呼んでいる。 私は・・・絶対に言えない。言えそうにないなぁ。 続けて佳子さんが喋りだす。 『倫子ちゃん知ってる?』 ドキッ! 『けっ、佳子さんが知らないのに私が知ってる訳ないじゃないですか。』 チクリ、チクリ、胸が痛い。 『まっ、そりゃそうね。って言いたいとこだけど・・・ 最近妙〜に仲良いじゃない?もう〜妬けちゃうわぁ。』 佳子さんの可愛い癖が始まった。 いつもの事だけど今日は必死に取り繕ってる自分が居た。 『そっ、そんな事ないですよ〜。佳子さんの方が仲良しじゃないですかー。 “秀くん”って呼んだりして。。。私は相変わらず“滝沢くん”ですよ。』 私の意味不明な答えに佳子さんは疑わなかった。 それにしても・・・やっぱ短か過ぎたかな? あれはドラマ「太陽は沈まない」の撮影が終わった頃。 私が身支度を整えている時、滝沢くんが話掛けてきた。 『倫子さん、明日休みだよね?』 『えっ?うん。そうだけど・・』 『俺もオフなんだぁ〜』 久しぶりの休みだから?少し嬉しそうだった。 『あっ、そうなんだぁ〜。』 ほんとは知っていたけど何故か初めて聞いた風に答えてしまった。 ここで“うん。知ってるよ”と言えれば、どんなに楽なんだろう。 素直に言えない自分が、もどかしい。 そんな私を見て滝沢くんが聞いてきた。少し上目遣いで。 『あのさ・・・何か予定入ってる?』 『別にこれと言って無いけど・・』 『じゃぁさ。。。ちょっと付き合ってくんない?』 これって・・・デートの誘い?と思わせる程、真剣な顔付き。 だから私も固まった表情で頷いてしまった。 その日の夜、なかなか寝付けなかった。 何故、私を誘ったんだろう? 理由を聞かなかった自分を責めた。 でも、自問自答をしても何も分からない。分かるはずがない。 疲れてるのに・・・眠れない。 『あぁ。。。もうこんな時間かぁ。』 ふと、時計を目にした。午前4時。 今度は窓の外をぼんやり眺めた。 星の夜は夜明けの朝に変わろうとしていた。 ―つづく―
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