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Kissの奇蹟 第7章
a miracle kiss
2003年7月
しいな 作


 「きゃあ〜 たっちぃ〜!さ〜ちゃっ!」
甲高い幼児の声が響くとまたしても滝沢くんの足に激突。
そしてお決まりの抱き上げ。
結局・・待ち合わせ時間には間に合わず、空港の出発ゲート前で会うことになった。
「今日は、ますます可愛いね☆」
と滝沢くんが言うと3歳児は嬉しそうに抱きつく。
普段・・そうゆうこと言う人じゃないんだけどなぁ・・遊んでるな?
きっと、和ちゃんの初恋の相手は・・滝沢くんなんだろうなぁ。
将来・・心配。すごく面食いになりそう・・。

「なるほど〜・・遅れたワケはこういうことかぁ。」
じ〜っと冷たい視線を義姉から受ける。
私は、視線をそらしてハンカチで汗を拭く。
「失恋だわ・・ファンやめようかな。」
「え〜っ・・ダメですか?」
滝沢くんが悲しそうな顔をすると・・首をぶんぶん振る。
「ごめんなさいっ。失言でしたっ。ドラマ見るからねっ。」
「ありがとうございますっ。体に気を付けて向こうでも元気でいてくださいね。」
途端に営業スマイル。
完璧な口角の上がる口元。
「うわ〜んっ・・死んでもいいっ。」
泣きそうになってる。
「もう・・義姉ちゃんたら。死んだらダメでしょ。」
滝沢くんも笑ってる。
すると、義姉は私を見てにっこり微笑む。
「滝沢くん・・さくらの事・・よろしくね。ホントに実は心配なのよ。」
義姉は、滝沢くんから和ちゃんを渡され抱きかかえる。
「はいっ。任せてくださいっ。」
そういうと滝沢くんは照れて私を見つめる。
私もそんな滝沢くんを見て自然と顔が緩む。

「さ〜ちゃ・・だっこ!」
今度は、私におねだり。
ずっしりと重みが両腕に伝わる。
しばらく和ちゃんとも会えないんだなぁ。
今度会ったときは、また重いんだろうね。
「和ちゃん、ママの言うこと良く聞いてね。大きくなったらまた遊ぼうね。」
きょとん?!とじっと私を見る。
「さ〜ちゃ・・は?いっしょにいこう?」
「私は、一緒に行けないのね・・」
というと途端に悲しそうな顔をしたかと想うとボロボロと泣き出した。
胸がキュンキュン締め付けられる。
ずっと・・側にいてくれた和ちゃん。
「さ〜ちゃもいっしょじゃなきゃ〜やぁだ〜!」
一向に泣きやまず私は狼狽える。
つられて泣きそうになる。
すると・・肩に温もりが感じられる。
滝沢くんが私の肩を抱く。
「あ〜・・泣いてる。今度一緒に遊んで上げないぞ!ね!」
私をみて微笑む。
和ちゃんは、ピタッと泣きやんで私たちを交互に見つめる。
だけど、出発まで全然離れてくれなかった。
離れた後は号泣・・顔がぐしゃぐしゃ・・。
飛行機の中では泣き疲れて寝てしまったらしかった。




 あれから・・数週間がたった。
私は、相変わらず大学に通い・・最近、アルバイトも始めた。
ソファに座って滝沢くんから貰った写真集を飽きもせず何度も見ていた。
ふと・・時計に目を留める。
寝室に向かって歩いていく。
「滝沢くん・・起きないと遅れるよ。」
タオルケットに腰にくるまった肢体がベットに横たわっている。
茶色の髪が動いて寝ぼけた顔が私を方を向いた。
ちょっと腫れぼったい黒目がちな瞳がとろんとしたかと想うと 私に焦点が合わさる。
「おあよ・・。」
ふっ・・と柔らかい笑顔がこぼれる。
「おはよ・・。」
私もつられて笑顔になる。
そして枕を抱えるように再びうずくまる。
背中には綺麗な肩胛骨・・背中があらわれる。
今にも羽がはえそうだった。

「滝沢くん・・遅刻するってば。」
私がそう声を掛けると体を回転させて私の方に向き直る。
「その呼び方!なんとかなんない?」
「呼び方?ああ・・なんか馴れちゃって・・ダメ?」
枕を再び頭の下に置いて寝ようとする。
「オレだって・・さくらって呼んでるじゃん。じゃなきゃ・・起きない。」
拗ねてる・・しょうがないなぁ。
なんか・・照れる。
「秀明・・起きろ!」
「聞こえない・・きこえない。もっと近くで。」
ベットの脇まで来て再びそう言う。
「やっぱり聞こえない〜。」
今度は、ベットに腰を下ろして端正な顔を覗き込みながら耳元で「秀明っ」と再度ト ライ!(笑)
すると、手が伸びてくる。
両手が私の頬を包んで軽く触れるだけのキス。
「はい!良くできました!ご褒美のキスでした。」
極上の微笑み。
んははっとクシャクシャ笑い出す。
その後、ぎゅっと抱きしめられる。
・・遅刻しないんだろうか・・なんて想いながらちょっと至福の時を過ごす 私だった。





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