君を想うとき・・・ 第11章 we can fall in love |
2000年10月 海亜 作 |
『誰なの?私の知ってる人?』 なんて恐くて聞けなかった。 その相手の名前を耳にした時、自分が立っていられるか自信が無かったから。 多分、今の私は泣き崩れてしまうような気がした。 それ程に滝沢くんの事を好きになっていた。 『そっか。。。そうだよね!好きな人の1人や2人居て当たり前だよね』 『俺・・・好きな人なんて1人しか居ないよ』 『あっ、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないの。ほんと、ごめん』 『でもさぁ〜。何でそんな事聞くわけ?もしかして俺に興味持ったとか?』 『ちっ、違うわよー。ただ聞いてみただけっ! 私ったら何バカな事聞いたんでしょ。あ〜恥かしい』 そう言って近くに有った滝沢くん愛用のヤマピ〜うちわで煽いだ。 『あ――!それ!俺の大事なぁ。。。あ〜あ。これ観賞用なんだけどぉ』 『あっ!ごめん。すっかり忘れてた』 『も〜。まっ倫子さんならいいや。いつもお世話になってるし』 『あれぇ?なんか素直な滝沢くんって・・・恐い(笑)』 『あっ、ひっでぇー。でもさ・・・実はお願いが有るんだぁ』 そう言うと両手を合わせてお願いの格好をして見せた。 『HIDEZOを・・・預かって欲しいんだけど・・・』 滝沢くんは明日から勉強の為、アメリカへ行く。 その間、放って置けないし、お母さんもその時旅行で預けれないらしい。 『いいわよ。私で良ければ』 『やったぁー!まじサンキュ〜。助かった』 そう言って私にHIDEZOと餌を預けてアメリカへと旅立って行った。 それから4日が過ぎた。 『はい。いっぱい食べて大きくなるんだよ〜。』 HIDEZOは美味しそうにガツガツ食べている。 そして食べ終えても、まだシッポを振りながら何かを求めていた。 『何?まだ足り無いの?あ――!分かった。散歩でしょ?』 そして綱を持ってくるとジャンプしながら喜んでいた。 『もう11時だけど・・・大丈夫か。よし!行くよ〜』 私は夜の街をHIDEZOと走った。 『くぅ〜。走るのって気持ちいいねぇ〜。気分爽快!爽―――!って感じ』 私のオヤジギャグにHIDEZOはワンワンと答えてくれた。 ほんと、可愛いなぁ。 『明日は大好きなご主人様が帰ってくるよ〜。嬉しいねぇー!』 HIDEZOは私の言った事が分かるのかキャンキャンと答えてくれた。 『さ〜家までダッシュ!』 そう言って走ろうとして家の近くの公園に差し掛かった時・・・ 背後に人影を感じた。悪寒が走って後ろを振り返った。 HIDEZOはガルルルと唸っている。 そして暗闇の中から『倫子さん・・・』と呼ぶ声が。。。 ―つづく― |