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君を想うとき・・・ 第9章
we can fall in love
2000年10月
海亜 作


『ありがとうございます。でも・・・そんな器。私には有りませんよ』
『そんな事無いわよ。滝沢くんの顔見れば分かるもの。大丈夫よ』
佳子さんは真剣な表情で私を見ている。

『私・・・』そう言い掛けた時、打ち合わせを終えた滝沢くんが再び戻って来た。

『あれぇ〜?何か真剣に話してる。あっ、もしかして俺の悪口言ってた?』
『そうよ〜。昨日のコンサートで“アイ〜ン”してくれなかったって怒ってたの』
『あっ、ひっでぇー。俺ちゃんと2人にスペシャル光線送ってたじゃん!』
『光線はもう慣れてるからアイ〜ンして欲しかったのっ』
『あっ、アイ〜ンはもう卒業したから。今はコマネチ!なの』
『ダメ!アイ〜ンやってくれなきゃ今日の衣装はバカ殿にしちゃうぞっ!』
『わぁ〜い!やったぁー!』
『コラ!まじで喜ぶんじゃありません!ほら、私の事“あい〜んしてる”って言いなさい!』
『分かった!分かったよ。やればいいんでしょ。あい〜しって・・・何か言葉違わない?』
『アハハ。バレたか。上手く騙せると思ったのにぃ』
私は2人の掛け合いを聞いてるのが好き。 『はい。仕事始めるわよ』
佳子さんは、そう言ってメイク道具を取り出しプロの腕前を見せた。
当然と言えば当然なのかもしれないが仕事の時は真剣勝負という感じ。
顔つきと言うよりは背中でそれが分かる。

『ドラマはね。“滝沢秀明”っていうより“真崎直”なのよね。
それを印象付けるのは難しい。だからこそ遣り甲斐も有るんだけどね。
私も滝沢くん同様、手抜きはしたく無いの。
視聴者を裏切るのは1番やっちゃイケナイ事だと思う。
たかが髪型や衣装って思われるかもしれないけど
その印象によって役柄も変わってしまうでしょ?』
佳子さんはモニターに映った滝沢くんを見てそう語っていた。
私も誰かの為に、そして自分の為にそうなりたいと思った。

いつか滝沢くんの髪型をセットしてみたい・・・

そんな願望を抱いていた。

6月は、あっと言う間に過ぎ季節は、もう夏の真っ只中。
7月の日差しは強い。
私がこの仕事をして約半年が経とうとしていた。

今日はガキバラ『タッキー王子』の収録が外で行われた。
犬の着ぐるみを着せられ汗だくになってる滝沢くんは辛そうだった。
でもアイドルなのにお笑い好きな彼には『おいしい』と思ってるように見えた。
時々、嬉しそうに楽しそうにしていたから。

お受験嵐の撮影も有った。終了後、二宮くんが楽屋に遊びに来た。
遊びに来たと言うより相談に来たという感じ。
『あっ、どうも。久しぶりっす』
『おっ、久しぶりだなぁ。ま〜入ってゆっくりしてってよ』  

                                 ―つづく―

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