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悲しみが解けるとき 3章 
2002年3月
しいな 作


 今日はオフ。朝から友達と遊び歩いた。
カラオケ行ったり、美味しい物食べにいったりと充実。
だけど・・天気がいいこの日・・。もう少しで夕暮れ・・。
オレは、この間現像した写真を手に持って、また・・あの公園に足を向ける。
また・・夕暮れもオレの写真魂が刺激される。
風景や人を何気にシャッターに納めていた。
昨日は、亀梨や赤西の写真を撮りまくったなぁ。
本当にあいつらは面白い。今度、雑誌のロケ一緒だって聞いた楽しみだ〜〜!
・・なんて思いつつファインダーを覗いた。
公園の遊具の場所に向かうと・・・
「あっ!!」
彼女だった!和ちゃんという赤ちゃんを連れていた人。
この前は・・確か髪を結っていたような気がしたけど・・下ろしていて 少しメイクしてるっぽい。
オレは、声を掛けようとするけど・・。
ブランコに座ってバックの中からあるものを取り出してみていた。
何だろう?手帳かな?それを見ていた彼女がふっっと優しい笑みを浮かべた。
数枚めくっていたとき、突然、彼女の瞳から光るものが流れていた。
オレは、その悲しげな表情に胸がしめつけられる。
同時にカメラで彼女をシャッターに納めていた。
当然・・シャッター音は彼女に届いた。
気づいた彼女は、オレの方を向いた。





「あっ・・!こんちわ〜。」
明るい優しい声が聞こえる。
サングラスとニット帽。ジーンズに白いムートンのジャケットを来た青年だった。
カメラを持った、滝沢秀明くんがそこにいた。
私は、あたふたと手で涙を拭って見ていた手帳をバックにしまった。
もしかして・・泣いてるの見られた?
そして・・写真を撮ってた?
「ども!勝手に撮っちゃってすみません。散歩ですか?」
そう聞いて彼は、私の隣のブランコに座る。
彼は、辺りを見回している。
「今日は、お昼からお休み貰ったんです。
今日は、兄夫婦の結婚記念日なんだけど 家族水入らずで過ごしたいってことだったので・・。」
と答える。
彼は、静かにブランコをこぎ出した。キコキコと音が鳴る。
「おまけに・・今日は、帰ってこなくていいとも言われてしまって・・。
途方に暮れてるんです。」
とさらに付け加える。ああ・・ちょっと言っていて落ち込んできた。
「友達とかは?連絡して遊べばいいんじゃ・・あ・・学生なら平日なら無理か。」
彼は、私に向かって優しく声を掛ける。
そうなんだけど・・。ちょっと会いづらいなぁ。
向こうもきっと私の事なんて忘れているんじゃないかな〜。
なんて・・ふと彼の顔をみると・・なんか・・ちょっと真剣な表情?
心配してるっぽい感じ?何故だろう。
すると・・どこからともなく・・お腹の虫の音が聞こえる。
「あっ・・!」
わっ・・私かぁ〜。(汗)私は、まずい〜とお腹を抑える。
そう言えば・・お昼からご飯食べてないんだった。
恥ずかしいっ。滝沢くんを見れない・・どんな顔してるんだろ。
「あのっ!飯食べにいきませんか?オレ・・奢りますよ。」
突然、滝沢くんがそう私に向かって言った。
「えっ・・でも・・お仕事とかは?」
私は、びっくりしてちょっと間をおいてそう聞いた。
「今日は、休みなんです。この間の写真持ってきたんですよ。
モデル代って ことで・・行きませんか?」
にっこりと微笑んでそう誘ってくれた。
いいのかな〜?私みたいなのがお供しても・・。
モデル代って和ちゃんだしなぁ。
なかなか・・承諾しない私に滝沢くんは、
「オレとじゃ・・迷惑ですか?」
って逆に聞かれた!と・・とんでもな〜い!
私は、首を横に振って「そんなことないですっ!」と大きい声をだした。
「なら、行きましょう。き〜まりっ!」
と・・とびきりの笑顔を私に向ける。
「じゃぁ・・お言葉に甘えて・・。」
上手く乗せられたような気もするけど一人でどこかで食べるよりいいよね。
彼は、なんだかすごく嬉しそう。ちょっと・・ガッツポーズしてる。(?)
「そういえば・・名前聞いてなかったっすね。」
彼は、私の顔をのぞき込むようにそう聞いてきた。
ああ・・そう言えば・・言ってなかったかぁ。
「響さくらです。」
と自己紹介すると彼は、不満の表情。首を傾げる私。
「それだけすか〜?オレなら滝沢秀明19歳職業ジャニーズJrとかいいますけ ど。」
職業は、アイドルじゃなくて?と思いつつ仕方なく私は、
「響さくら・・22歳・・。一応・・大学生です。」
・・と答える。すると彼は、「一応?」と聞き返してくる。
「・・2年休学してるから・・大学生のような・・プータローのような・・。」
と笑いながら言うと納得してくれたみたいだった。
「何か食べたい物とかあります?」
そう聞かれてどうしたものか・・と考える。
あんまり・・高い物を奢ってもらうのも気が引けるし・・。
そうだ・・ラーメン!久しぶりに本格的なのが食べた〜い。
「美味しいラーメンが食べたいです。」
というとズッコケる。何でだろう?
「もっと・・良い物食べに行こうよ。せっかく奢るんだから。」
って言われたけど・・結局ラーメンになった。
滝沢くんの車でそのお店まで移動した。





滝沢くんの車に乗って彼がいつも行くというラーメン屋に向かう。
家の近くで友達とお腹が空くとここに食べに来るらしい。
お店に着くとカウンターからも見えるお座敷に上がってラーメンを食べる。
私は、彼がお気に入りのラーメンを勧められて食べた。
食べた後は、この間公園で撮って貰った写真を一緒に見る。
写真を一枚一枚見せてくれる滝沢くんは、やさしい表情を浮かべていた。
なんだか・・写真は、プロみたいに上手で和ちゃんもすごく可愛く写っていた。
楽しそうに笑う彼に・・なんとな〜く私は見入ってしまった。
「和ちゃんって義姉の影響をすごく受けてると思うんですよ。」
私は、写真を見ながらそう彼に言う。
「ほらっ!前も言いましたよね。滝沢くんのファンだって。
だから・・TVとかも ビデオとかも教育番組より見てるんじゃないかな〜。」
彼は、「ははっ!」と明るく笑って、
「そうなんだ・・びっくりしてませんでした?オレと会ったって聞いて。」
私に聞き返した。
「もうね〜。教えてくれたら飛んで来たのに〜って言われたんですよ。」
私たちは、お互いに笑い合う。
なんて・・心地よい空間なんだろう・・。
和ちゃんや・・兄夫婦たちといるときとはまた違う感じ。
前にも・・こういう感覚があったなぁ・・。もう随分前になるけど・・。
「どうかしたんですか?」
ちょっと・・思い出していると滝沢くんが心配そうに聞いてくる。
「何でもないんです。そろそろ出ませんか?」
というと・・彼は頷いて予定通り奢ってくれた。
もう時計の針は時刻は、夕方を示している。
「ちょっと・・電話していいですか?」
お店を出た後、彼にそう聞いた。
滝沢くんは、「どうぞ!」と軽く承諾してくれた。
携帯から家に電話してみた。
何度コールしても出なかった。ひど〜い!何でよ!
「う〜ん・・何で出ないのかな〜?私を閉め出そうって魂胆ね!」
・・とちょっとムッとしながら言うと彼は、ニコニコと笑ってた。
いやだわ・・笑われちゃった。
と携帯を鞄にしまうと・・
「じゃあ・・オレに少しつき合ってくれませんか?」
とじっっと見つめられてそう言われた。
「えっ・・。」
と思わず・・声が出てしまう。
「遅くならなければいいですよね?あれくらいじゃ奢ったうちに入らないでしょ?」
などと顔を覗き込んでにやっと笑う。
「ご飯奢って貰っただけで充分ですよ。」
私は、そう言って彼を見つめる。
すると、「いいから、そんなに手間は取らせませんから。」と私の背中を 押して促す。
「ど・・どこに行くんですか〜?」
「さぁ・・どこでしょう。ほら、早く早く。」
私は、急かされて彼の車の後部座席に乗る。
滝沢くんは、シートベルトをしてエンジンを掛ける。
もう・・陽が陰っている。
その中をライトに照らされた道を疾走していった。


―つづく―




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