瞳で殺せ!!第9章 when I sit by him |
2001年9月 しいな 作 |
もう、11時を回ってる。 「滝沢くん、明日も仕事でしょ?もうそろそろ・・。」 帰った方が良くない?って言おうとしたら・・彼は、じっと私を見つめてる。 真剣に・・。私は・・また・・瞳をそらしてしまう。 「明日は、仕事だけど昼から。ほら、まただよ。オレのことちゃんと見てよ。」 彼は、立ち上がって私の両肩を掴んだ。 「昼間の・・死んじゃうって・・何?気になってしょうがないんだけど。」 「私・・滝沢くんの瞳に弱いんだ・・。」 滝沢くんは・・「え?」って感じで私を見てる。 「じっ・・と見つめられたりすると・・呼吸困難になりそうなの。」 今も・・その状態・・心臓が・・動悸が・・大変なことになる。 「ドキドキして・・体中が熱くなるの。だから、仕事中だと手元とか狂いそうだから ちゃんと・・見れなかったの。 嫌な思いさせてたんだね・・ごめんね。」 すると・・彼のため息が聞こえる。 「そんなのオレだって同じだよ。みはるさんに見つめられるとドキドキする。」 私に言い聞かすように優しくそう言った。 「だから、避けられてる時は・・すごい辛かった・・。オレは・・みはるさんに 見て欲しいんだ。 ほら・・心臓バクバクでしょ。」 私の・・右手を掴んで・・滝沢くんは自分の左胸に当てる。 とくん、とくん¢≠「スピードで彼の心臓が脈打っているのがわかる。 私は・・頷く。 「みはるさんは?」 彼は、そっと前から私を抱きしめてくる。 そして・・耳元で・・そっと囁く。 「確かめても・・いいかな。」 甘くて優しくて・・私はなんて言っていいものやら・・言葉に詰まる。 私の返事を聞く前に・・彼は右手を・・私の左胸に置いた。 「同じだね。みはるさん。」 私は・・目の前の美しい青年に見つめられて・・ぼーっとしてる。 「ところでさ〜。オレ・・今日・・帰りたくないな〜。」 また、ギュッと抱きしめられる。 私は・・何も出来ず・・まな板の鯉状態だった。 「・・でっ・・でもぉ・・。」 と言うのだけが精一杯だった。 「決まり〜!朝まで一緒だね。」 勝手に決めないでと・・喉まで出かかったけど、呑み込んだ。 だって・・それを望んでいる自分がいるから・・。 おまけに・・抱きしめられて離れたあとの極上の笑顔で・・何も言えなかった。 そして・・私たちは・・朝まで一緒に過ごしたのだった。 翌日・・トオルさんがロンドンに帰ると聞いていたので見送りに行った。 それも・・滝沢くんの運転する車で成田まで行くことになった。(冒険だね・・。) 「なんだ・・?お前ら・・なんで2人でいるんだ?」 訝しげに・・会ったそうそう聞いてくる。 「それは・・。」 私たちはお互い見つめ合って照れてしまう。 滝沢くんは薄い色のメガネを掛け帽子を目深にかぶっていたんだけど、 色がしろいから・・赤くなるのがすぐわかる。 たぶん・・私も目が笑っていたんだと思う。 「いつの間に・・。」 と呆気に取られていた。そうだよね。 昨日の電話までは・・私の片思いだった。 「やっぱり・・言わなくて正解。」 トオルさんは、滝沢くんを見てそう言った。 「こいつがお前のこと好きなのオレ知ってたんだわ。」 なんでも・・この間のデート(トオルさん曰く)を滝沢くんに見られいたらしい。 「えっ・・嘘っ。何で教えてくれなかったんですか!滝沢くんも!」 「バカだなぁ・・振られたのにそんなことわざわざ教えないよ・・普通。」 滝沢くんは、「ね?」とトオルさんの顔をのぞき込む。その仕草が可愛い。 その後「てめぇ・・女みたいな顔してるくせに・・生意気な!」と羽交い締めにされる。 なんだ・・じゃれ合ってる。案外仲がいいんじゃない? 「おら!・・みはる泣かせてみろ?只じゃおかねぇからな。」 「わかってますって。なんか・・子供みたいっすよ・・。」 と滝沢くんが醒めたようにわざと言うと「うりゃぁ!」とプロレス技を掛けてる。 なんか・・滝沢くん・・嬉しそう。このふたり・・気が合うかも。 すると、アナウンスが流れる。 トオルさんが乗るロンドン行きの案内だった。 「そんじゃぁ・・まぁ・・元気でな。」 トオルさんは、サングラスを掛けてにやっっと笑った。 「うん、トオルさんも元気でね。」 私がそう言って手を振る。 「まぁ・・いつでも、こいつに飽きたらオレの所に来いよ。」 とトオルさんは、滝沢くんを見る。 「往生際が悪いっすよ〜。」 ・・とぼそっと彼は容赦なく言う。 「今度・・会ったら覚えておけよ。」 と・・中指を立ててる。ああ・・下品ですよ・・トオルさんってば。 そう言うと手を振りながら搭乗口へと歩き出して行った。 「面白い人だね・・。佐見さんって。」 見送った後、二人で並んで歩く。 「でしょ?なんか・・話合いそうだよね。」 そんなことを話しながら空港を出て車に乗り込んだ。 ジェット機が飛んでいく。すごい音がする。私は、それを見つめてる。 「ホントに・・良かったの?」 滝沢くんは、エンジンを掛けて車内の温度を下げるべくエアコンを調節しながら 聞いてくる。 私は、彼を見つめる。 「どうして?これでも一生懸命考えたんだから。いいのこれで・・。」 私は、隣にいる・・眩しいくらいに輝いている青年を見つめる。 彼はそれに気づいて私を見つめる。 「何年か先・・もしかしたら・・そういう事あるかもね。その時はわからないけど。」 「うん・・。」 「だから・・滝沢くんも・・もし・・私と離れなきゃならない時は・・。」 言ってね・・応援するから・・って言おうとしたとき・・。 肩を掴まれ・・抱き寄せられる。 「その時は・・その時だよ。でも・・みはるさんを泣かせるような事はしないよ。 あの人に怒られるからね。」 「そう・・だね・・。」 私は素直に頷く。すると・・一端・・滝沢くんの体が私から離れる。 優しい瞳に私が映る。ふと・・真剣な表情になって・・見つめられる。 うっ・・また・・ドキドキが・・私は・・目を瞑ってしまう。 「ほら・・また・・見ないんだもんな。」 と言うと優しく私にキスをした。 「ごめん・・でも、滝沢くんって瞳で殺せるよね。・・それで私・・落ちちゃったもん。」 瞳に力があるから・・それだけで・・イチコロです。 「何だよそれっ。でも・・効果あったんだ・・オレの事見てって念じてたから。」 彼は、顔をクシャっとさせて笑ってる。 「うん・・抜群。だから・・他の人をそんな風に見ちゃだめだよ?」 なんて言ってみる。 彼は、「はいはい。」と返事をするとアクセルを踏み込む。 それから、彼と短い距離のドライブ。 これから・・お互い仕事だ。今度はいつ会えるかな・・と考えていると・・。 また・・初心者なのに・・車のスピードを上げていく。そんなところまで・・ トオルさんと気が合わなくていいよ〜。降りたとき・・酔っちゃった。 滝沢くんのサイドシートは・・デンジャラスかもしれない。 彼の瞳を直視出来ない。 見つめられると、光につつまれるような感覚に陥ってしまう。 めまいを覚え痺れさえ、私の体に起きてしまう。 彼の瞳を見つめられない。 もし・・触れられたら・・どうなってしまうか・・わからない。 どうして・・こんなに好きになってしまったのだろう。 でも彼の瞳を逸らさずにはいられない。 心臓を射抜かれてしまう。全身が・・燃えるように熱くなる。 戯れたあの夜も・・見つめられただけで・・死んでしまいそうだった。 私の表情が・・あなたの瞳に映っている。 いつまでもその瞳に私を映していて・・そして・・側にいて・・。 ―FINー
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