Everything… 1章
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2000年12月 海亜 作 |
今年も残すところ後4日。 クリスマスも終わり街や店も、すっかりお正月仕様。 ケーキ屋さんに変わり今度はお蕎麦屋さんが忙しくなる頃。 そして世界中の人が心をワクワクさせている時。 午前1:00。 私は部屋でファッション雑誌を読んでいた。 《大晦日!あなたは誰と過ごしますか? 家族?友達?夫婦?恋人?片思いの人?・・・1人ぼっち?》 う〜ん・・・私は? 滝沢くんと過ごしたいけど・・・無理だろうなぁ。 普通の恋人同士だったら・・・きっと会うんだろうなぁ。 そう考えると少し寂しくなった。 でも、そんな事言っちゃダメだ! 滝沢くんから貰ったネックレスをギュッと握った。 “離れても・・・大丈夫。心は繋がっているんだから。” いつものおまじないをして自分に言い聞かせていた。 ピピ! 受信の音が鳴った。 あッ!滝沢くんかな? もしかして・・・気持ちが通じた? 心躍る気持ちを押さえながら急いで携帯メールを開いた。 “MIA” えっ?美亜さん? 珍しいなぁ〜。 実際、あれからメールのやり取りは1、2回程度だった。 【夜遅くごめんなさい。ちょっと相談があるので今度会ってもらえますか?】 相談って・・・なんだろう? 二宮くんの事かな? 滝沢くんから2人の事は大体聞いていた。 でも、それは二宮くんの気持ちだけ。 美亜さんの気持ちは・・・どうなんだろう? 【明日は?仕事が終わってからになるけど。】 そう返事をした。 仕事が早く終わる保証なんて無い。 だけど・・・一刻も早く会って話しを聞きたかった。 送信して5分も経たない内に返事が返ってきた。 【大丈夫です。じゃぁ連絡待ってます。】 そして、私達は会う事になった。 10分後。 今度は着メロが鳴った。 滝沢くん!! 願いが通じたのかな? 『もしもし?』 弾んだ声を押さえながら言った。 「あっ、俺。寝てた?」 『ううん。あっ、そうだ。今ね・・・』 そして、明日美亜さんと会う事を話した。 滝沢くんも私同様2人の事を気にしていた。 すれ違いをしている2人を・・・。 次の日。 『あのさ・・・今日、仕事早く終わらせてもらってもいい?』 開店の準備をしてる時、香代子に聞いた。 『うん。いいよ。この雨だし・・・お客さんも少ないでしょ。』 『ありがと。』 昨晩から降っていた雨が本降りになり 朝の時点で、もう大雨警報が発令されていた。 手にしていた傘も折れそうなくらい雨風が強かった。 今日、昼からドラマの撮影が外であるはず・・・。 滝沢くん・・・大丈夫かな? 降りしきる雨を見ながら、そう思った。 午後5:00。 『お先〜』 香代子にそう言って店を出た。 雨は一向に止む気配が無い。 むしろ強くなっていたような気がした。 視界がぼやけて、よく見えない。 傘をギュッと握り締め歩き出した。 5:20。 渋谷に着いた。 駅の中の落ち着いた感じの店で美亜さんを待った。 10分後。 〜いらっしゃいませ〜 コートと髪の毛から雫を零しながら急いで入ってくる人が。 あっ! 1度だけ会った美亜さんの顔をハッキリ覚えていた。 でも・・・美亜さん気付くかな? 少し不安に思い立ち上がろうとした時私を見て微笑んだ。 そして軽い会釈。 よかった。覚えててくれたんだ。 私も笑顔で会釈を交した。 『ごめんなさい!待ちました?』 息を切らせながら必死になって言っている。 『ううん。さっき来たとこ。あっ、私コーヒー頼んじゃった。』 『はい。』 コートを脱いで隣の椅子に掛けると同時に店員さんが来た。 「ご注文は?」 『ホットコーヒー1つ。』 『今日は突然、ごめんなさい。』 また謝ってるよ。謝るのが好きなのかな? そう言えば・・・滝沢くんも言ってたなぁ〜。 会った時、何度も謝ってったって。 その事を思い出し思わず笑ってしまった。 『えっ?私、なんか変な事言いました?』 『ううん。なんでもないよ。』 美亜さんは不思議そうな顔をしている。 『あっ、久しぶりだね。あの時以来だから・・・』 『2ヶ月ちょっとです。』 『そっか・・・』 『携帯の事も・・・ごめんなさい。』 『ううん。』 笑いを堪えながら言った。 また謝ってるよ。癖なんだな。きっと。 『滝沢くんとは・・・あの〜、その〜。。。』 『あっ、会えたよ。お陰様で。』 『そっか〜。良かったぁ〜。』 ほんと、人の事ばっか気にしてるんだから。 ピカ! 目に刺さるような光と供に物凄い爆音が襲った。 『きゃッ!』 美亜さんが声を出して驚いていた。 『あ〜ビックリした。凄いカミナリだったね。』 『はい。』 何気に視線を外に向けた。 雨は地面を反射して、まるで・・・線香花火のようだった。 『ところで相談ってなに?』 2杯目のコーヒーを飲んでる時に切り出した。 『あの・・・実は・・・私・・・。』 美亜さんは頭の中の整理がつかないのか言葉が途切れ途切れ。 だから私はストレートに聞いた。 『もしかして二宮くんの事?』 『えっ!どうして知ってるんですか?』 『ごめんね。滝沢くんから少し聞いてたんだ。』 『そっか。そうですよね。』 そして、今までの事を詳しく聞いた。 出逢った時の事、別れを選んでしまった心境等を。 『私・・・ずるいですよね。逃げてばっかで。』 『・・・うん。卑怯かもしれないな。』 ハッキリと言った。 心にも無い事を言うのがイヤだった。 嘘で固めた友情、偽りから始まる友情を築くよりも 真実を口にし友情を深めたいと思ったから。 『ありがとうございます。そう言ってもらえて、スッキリしました。』 『良かった。美亜さんがそう言ってくれて。』 『えっ?』 『あっ、ううん。でも・・・強いね。美亜さんは。』 『そんな事ありません。私・・・弱いですよ。 現に和也くんに会いたいと思いコンサートに行ったり・・・。 こっちに転勤になって心のどこかで会えるの望んでましたから。 自分からサヨナラしたくせに。 だから・・・倫子さんの言った通りです。』 美亜さんは寂しそうに笑っていた。 『ねぇ〜、二宮くんの事、好きなんだよね?』 思い切って聞いてみた。 『・・・』 黙ったまま視線を下に向けていた。 『あのさ・・・噂とか気になるの?』 『・・・心のどこかで引っ掛かっていました。 私と付き合ったら和也くんの将来がダメになるんじゃないかって・・・。でも、今は』 美亜さんの言葉を最後まで聞かず言った。 『そんな見方してたら二宮くんが可哀相だよ。 二宮くんは美亜さんの事で将来ダメになんてならないと思うよ。 逆に美亜さんの為に頑張れると思うんじゃないかな。 アイドルだからって言っても人間なんだよ。恋愛は自由なんだよ。 そんな事恐れるような男じゃないって。』 『倫子さんは滝沢くんと付き合う時、そう思ったんですね。』 ドキッ!! 『そっ、そうかなぁ?そうかもしれないなぁ〜・・・。』 焦って答えた。顔が赤くなったのを感じた。 『クスッ。倫子さんって可愛いですね。』 かっ、可愛いって・・・。 あっ! 話反らされてる事に気付いた。 『私の事は今どうでもいいの。今は2人の事話してるんだからぁ。』 『そうですよね。ごめんなさい。』 『ぶっ、また謝ってる。』 『えっ?あっ、ごめっ・・。』 『もぉ〜!かなり天然入ってるね。可笑しい〜。 あっ!また話反れちゃったよ〜。えっと・・・何だったっけ? あっ、そうそう。噂なんか気にしちゃダメよ。』 『はい。今は気にしてません。』 美亜さんは優しく微笑んだ。 そっか、良かった。 えっ?でも・・・確か相談って言ってたような? 噂の事じゃなかったら・・・他にどんな問題が有るのだろう? もしかして二宮くんの気持ちが分からないとか? 私は滝沢くんが言ってた事を思い出し美亜さんに告げた。 『二宮くんは美亜さんの事、今も好きだよ。』 美亜さんは驚いた顔をし私をじっと見ていた。 そして手にしていたカップを置いてゆっくりと話出した。 『・・・昨日、電話で和也くんに言われました。』 『えっ?なんて?』 『“付き合おう”って。』 『何て答えたの?』 『ただずっと黙ってました。』 『二宮くんは?』 『泣きそうな声で“もういいよ・・・”って。』 『あのさ・・・好きじゃないの?二宮くんの事。』 『・・・好きです。出逢った時から、ずっと好きです。』 目を潤ませ、ゆっくりと答えた。 『じゃぁ、どうして?私には分からないよ。』 『私が悪いんです。』 『えっ?どういう事?』 『恐いんです。気持ちが離れてしまうのが・・・。 私・・・遠距離恋愛をしていました。 最初は離れても大丈夫って思ってたんだけど・・・ 結局最後に“好きな人が出来た”と言われました。 私、相手の人の事を信じられず疑ってばかり居たんです。 きっと、それが重荷になったんだと思います。』 今にも泣きそうな表情をしている。 私は以前、付き合ってた人の事を思い出した。 美亜さんは・・・その彼の事、今も忘れられないのかな? もし、そうだとしたら・・・。 でも、さっきハッキリ私に“好きです”と言ったはず。 『二宮くんとは・・・大丈夫だよ。 私なんかより美亜さんの方が知ってるはずだよ。二宮くんの事。 十人十色っていう言葉知ってるよね? 人相、体格が違うように人の心も違うんだよ。 毎日会っていなきゃダメっていう人も居れば 1年に1度でも会えればイイって思う人も居ると思う。』 美亜さんは黙って私の言う事を聞いていた。 『あのね。実は・・・私も遠距離恋愛してた事が有るの。 美亜さんと同じように相手の事を疑ってばかりいたの。 そして別れてしまった原因が自分に有ると責めていた。 そんな自分が悲しかったし、辛かった。 でもね。滝沢くんと出会って考え方が変わったの。 “こういう辛い経験も滝沢くんに会う為だったんだ・・・”って。 だから今までの経験を無駄にして欲しく無い。糧にして欲しいの。 美亜さんも二宮くんに会う為に、その経験をしたんだよ。きっと。 だから大丈夫!今度は上手く行くから。私も応援してるよ。』 いつになく熱く、一生懸命語った。 でも・・・美亜さんは相変わらず黙ったまま。 私の声。届かなかったのかな・・・。 ―つづく―
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