Drive date____
後編 |
2001年5月 しいな 作 |
「どこにしようか・やっぱり・・健康センターみたいな日帰り出来るところがいいよなぁ・・。」 車をゆっくりと走らせながら温泉地を回ってる。 「せっかくだから、旅館にしようよ。」 君が外を見ながらそう言う。 「旅館かぁ・・日帰りでも入らしてくれんのかな?」 君が指をさした方向に、いい感じの和風の旅館が見えてくる。 とりあえず、そこの駐車場に車を止めて降りた。 旅館に入って行くと女将さんらしい気さくな年輩の女性が出迎えてくれた。 オレたちを見て「2名様ですね。」と言ってくる。 君は頷いて、ふと悪戯っぽい瞳でオレの方を見る。(何だよ?) 「部屋・・開いてますか?」 なんて聞いてる。オレは隣で慌ててる。 女将さんらしき人は、「大丈夫ですよ。ご一緒のお部屋でいいんですよね。」と サラリと聞いてくる。 女将さんらしき人は、仲居さんを呼んでオレたちを部屋に案内させる。 君は、戸惑うオレの手を掴んで引っ張っていく。 「わぁ・・いい眺めですねー。露天風呂なんてあるんですか?」 「ええ・・ありますよ。男女・・分かれてもありますけど、混浴もあるんですよー。」 明るく2人で話をしてる・・こいうとき人見知りのおれとしては助かるけど・・。 初対面でやけにうち解けてるなー。 「ねぇ・・混浴もあるって二人で入ろうか。秀くん。」 なんて・・聞くなよっ。いきなり振られてなんて答えて良いものか・・。(///) 君は、その後も仲居さんと盛り上がって話をしてる。(おいおい!) 「では、ごゆっくり。」とひとしきり世間話をした後、仲居さんは 出ていった。 「ちょっと・・日帰りにすんじゃなかったのかよ。」 オレは・・内心穏やかじゃない。 まともに君の顔を見れやしない。 「いいじゃない。明日も休みなんだもん。ゆっくり体を休めなきゃだめだよ。」 君は、そう言って、オレの背中を抱きしめてくる。 あ・・あのう・・そういうことをされると非常に・・困るんだけど・・。 「じゃ・・ご飯の前にお風呂にする?行こ、行こ。」 ※ 手を引っ張られ温泉めぐり・・。他の旅館や銭湯をはしごする。 すでにゆでだこ状態なオレ・・。 止まる旅館の風呂に入って浴衣に着替える。 あー!これぞ温泉に来たって感じだ。 男湯から出ると、まだ彼女は出てきていない。(さすがに・・混浴は・・まずいよね。) 「秀くん!お待たせ。あっ・・似合ってるねー。色っぽい〜♪」 ・・と元気な声。彼女も浴衣を着てる。 それは・・こっちのセリフだっての!そう・・はじめて見る・・君の浴衣姿。 長めの髪を上げていて、うなじが見える。これが・・色っぽいって言うんだよ。 「何見てるの?」 「見とれてたんだよ。」 オレにしては・・珍しく誉めてる。(照) そんなオレの腕に君がしがみついてくる。 部屋に戻ると食事が用意されている。 オレの大好きなカニはなかったけど、 海と山の幸がふんだんに使われていて旨かった。 ひとしきり・・TVを見た後・・もう・・寝る時間に・・。 「さあてと・・寝ようか?秀くん。」 「えっ・・。う・・うん。」 ああ・・どうしよう・・。君の顔をまともに見れない。 オレは・・隣の部屋の障子を開けると・・そこに崩れ落ちる・・。 そう・・お決まりの布団が・・ひいてある。(ご丁寧にもくっついてる・・。) 「こっちの電気消すね・・。どうしたの?」 君は、電気を消して・・こっちの布団をひいた部屋に来た。 「秀くん?」 オレは・・思わず・・君を抱きしめてしまう。 「ごめん・・オレ・・我慢できない・・かも。」 「もう・・分かってないなぁ・・。」 ・・と君は・・オレの背中に手を回す。 「えっ?」 「今日・・ドライブに行こうって言ったのも温泉に泊まりたいのも私からだよ。 秀くんと・・一日中一緒にいたいって思ってたんだから。」 君は・・絞り出すように・・そう言った。 オレは、君を抱きしめる力を緩める。 君も回した手を外すと「電気消すね・・。」と立ち上がる。 そうだな・・分かってないのは・・オレだね。 仕事でいつもひとりにさせてる。でも・・愚痴も文句も言わない君。 辛い思いをさせているよね。何となく・・君が涙を流しているような気がした。 「ごめん・・。」 暗闇の中でオレは静かに君を抱きしめる。 強く・・激しく・・そして優しく・・。 君の心が少しでも満たされるように・・。 ※ 「さってと・・これからどうする?」 次の日、旅館をチェックアウトして車に乗り込んで、オレは助手席の君に聞いた。 君は、シートベルトを しながら考えてる。 「東京に戻って、秀くんの家でくつろぐ。」 「それこそ、いつもと変わんないじゃん。」 オレは、君にそう言って笑った。 「変わらないのがいいの。普通が一番。」 と・・君も笑顔。わっけわかんねぇ・・。現金なやつ。 「はいはい・・オレん家ね。行きますか・・。」 助手席で「出発進行!」と指をさす君を呆れて見ながら、 エンジンを掛けてアクセルをゆっくりと踏み込んでいく。 「秀くん、安全運転ね。飛ばしすぎだよ。」 「あっ・・オレの運転技術を侮ってるな。」 オレは、すかさず、反撃! 「何言ってんの!そういうのは、若葉マークとってから言いなさい。」 彼女もそう返してくる。うん、こうでなきゃ。 オレたちは、言い合いながら、家までのドライブを楽しんだ。 風になびく髪を掻き上げ、微笑む君がいる。 そんな君を見つめるオレが横にいる。 この構図は、未来永劫・・変わらない。 いつまでも、オレは、君の側にいるよ。 離れない・・はなさない・・。この気持ち、ずっと忘れない。 ―Fin―
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