儚き春の光・・・一夜 hikari akihide story |
2001年7月 海亜 作 |
時は今から千年以上も前、平安時代の話。 京の都に光源氏の孫君がいらっしゃいました。 名は『光明秀(ひかりあきひで)』と言い、お祖父様同様、美男子で賢いお方でした。 そして・・・何より受け継いだのは、女性を虜にしてしまう才能(?)でございました。 ま〜いわゆる女ったらしだったんですね(^^; 毎晩どこぞの姫君の所へ通い、虜にしてしまう。 それが秘めた恋なら尚更燃える!! 相手が拒めば拒む程、追いたくなる。 女御(にょうご=人妻)であろうが、入内(じゅだい=結婚が決まる事)の姫君であろうが そんな事お構い無し!! これまでに幾人もの女性が涙を流した事か・・・。 女性だけではございません。 「大切な姫君を寝取られたー!」と男性が悔し涙を流す事も多々。 しかし、当のご本人は、「それは私のせいでは無い。私に惚れるお方が悪いのだ」と。 若君に代わり、これまで何人の殿方に謝った事か・・・。 幼き頃より、お仕えしているわたしく・・・身が持ちません。 しかし、そんな若君を憎んだ事は今までに一度もございません。 優しいお心の持ち主だと分かっているからです。 でも、いつかは天罰が下るのでは・・・(^^; 毎日のように、それを案じておりました。 そして・・・とうとう、その時が訪れてしまいました。 それは宮中で秋の宴の最中。 若君は得意の蹴鞠をなされていました。 いつもなら難しい技を披露し、拍手喝采で終わるはずだったのが、突然、どこからともなく風が吹き、若君は変な体勢で鞠を追い、わたくしの身長の2倍ほどの高さの舞台から真逆さまっ!! ひぇ〜〜〜〜〜(><) そう!落ちてしまわれたのです。 観衆の姫君の中には失神してしまわれる方もいらっしゃいました。 わたくし?わたしくは若君をお守りする大切な役目!! 失神してる暇などありません。 顔面蒼白で気を失ってる若君を寝所に運び それから、ず〜っと側でお祈りしておりました。 あっ!申し遅れましたが、わたくしの名は時徒(ときただ)と申します。 れっきとした男なので、これを読んでる御方様!! 御心配なさらぬように(笑) えっ?わたくしの語りじゃ、つまらない?そうですよねぇ〜。 はぁ〜・・・いつの時代も若君とは。。。トホホ(-_-; それでは、バトンタ〜ッチ!(^O^)/~ ですがっ!時々参上致しますので、どうぞお見知りおきを(笑) ********************** 『若君!若君!』 『う、うん・・・。』 俺はその声で目が覚めた。 目を真ん丸にさせて・・誰かが覗き込んでる。 そして、苦笑いしながらこう言った。 『若君の意識が戻らず、わたくし・・心配で心配で・・・』 お、今度は泣いてるぞ。 そしれにしても・・・心配って・・・? それに・・・若君って? 『あ、あの・・・それ誰の事ですか?』 『何をおっしゃってるんですか?あなた様でございますよ』 はぁ〜? ところで・・この人は一体・・・ 『あなたは誰ですか?』 『なっ、何を・・。時徒(ときただ)でございます』 はぁ〜?ときただ? そう言えば・・・マネージャーの時田さんに、そっくり。 俺は笑いながら言った。 『なに、からかってるんですか?それにそんな変な格好して。あっ!分かった!ドッキリでしょ?』 そう言うと、その人は血相を変えて部屋を飛び出して行った。 ったく・・・。一体何なんだ? というより・・・ここは一体どこなんだ? 純和風といった感じの部屋。 大きな壷、綺麗な金屏風、豪華な物が幾つもあった。 セットにしては手が込んでるなぁ。 『こちらでございます!!』 時徒さんが戻って来た。 もう1人誰かを連れて。 医者なのか?白衣らしき物を着ている。 『どれ、どれ?』 その人が俺の頭に手をやったり手を取って脈を測った。 『体に異常は無いようです』 当たり前だよ。 この前の健康診断でも異常無しだったんだから。 『ですが・・・』 えっ?続きが有んの? 『記憶を無くされてしまったようです』 えーっ!! と俺が言う前に時田さんのような、時徒さんが言った。 『えーーーっ!!どっ、どう言う事なのですか?』 『つまり・・・舞台から落ちた際に頭を強く打った衝撃で・・・』 確かに頭が痛いような気がする。 現にさっきから立ち上がろうとしても体に力が入らず起き上がれない。 それにしても・・・俺が舞台から落ちた?へっ? そっと頭に手をやった。 すると・・・包帯を巻いていた。 しかもっ!髪の毛を結っている。なっ、なんでぇ〜?! これって・・・カツラ? 『俺・・・。俺は誰なんだ?』 『“おれ”とは、どう言う意味でございますか?』 『えっ?俺は俺だよ。何言ってんの?』 そう言って自分を指差した。 時田さんのような時徒さんは不思議そうな顔をして俺を見た。 俺って・・・通じないのか?そんな訳ないよな。 ったく〜、いつまで演技してんだか。 でも・・・目が真剣、それに表情も強張ってる。 不思議に思い、う〜んという顔で見ていた。 すると突然、泣き崩れてしまった。 『自分の名前をお忘れになられるなんて・・・うぅ、、、。 しかも、変な言葉使いに、おなりになるなんて・・・。わたくし、わたくし・・・』 『あ、あの・・・ここは?どこ?』 『は?京でございますよ』 『東京じゃなく?』 『とうきょう?それはどこでございますか?』 『えっ?つまり・・・日本の首都なんだけど』 『にほん?もぉ〜、なに仰ってるんですか!ここは京の都でございますよ』 えっ?!まさか!! 俺は恐る恐る聞いてみた。 『あの・・・今は何時代ですか?』 『は?平安時代でございます』 えっ、えーーーーーーーっ!! 頭がパニックになってしまった。 これは悪い夢!夢なんだ!よし!もう一度寝よう! そう思い布団を頭まで被り目を瞑った。 『若君!若君ー!』 という声を無視して。 そしていつの間にか眠っていた。 ―つづく―
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