シンデレラ・クリスマス Cinderella Christmas |
2000年12月 海亜 作 |
さっき2人で通った道を1人トボトボと歩いた。 止んでた雪が、また降り出してきた。 クリスマスに雪が降るなんて何年ぶりなんだろう。 俺は傘も差さず空から降ってくる雪を体で受け止めた。 冷たいけど・・・火照った体には丁度いい。 正直、家に入るという事は・・・倫子さんと。。。と考えていた。 倫子さんは、その気が無いのか普通にしてたけど 俺は体の中の欲情を押さえるのが必死だった。 繋いでいた手から鼓動が伝わるんじゃないかと焦っていた。 “じゃぁ。またね。” “うん。” 手を取って強引に連れ出したかった・・・。 大人ぶって「倫子さん、大丈夫?」なんて言ったけど 本当は「帰ってくるまで待ってる。」と言いたかった・・・。 両親が急病だから、仕方ない事。 分かっているけど、やっぱり分かってない自分に気付いた。 別れた後、こんなに後悔してる・・・。 〜まもなくホームに・・・・〜 そして30秒後、雪を乗せて電車が滑り込んで来た。 外の景色を見ているとガラス越しに恋人達が映った。 手を絡ませながら寄り添ってキスをしている・・・。 ったく、こんな場所ですんなよ! そんな光景は何度も見てるはずなのに 倫子さんと別れた事が寂しいのか嫉妬してしまった。 俺は被っていた帽子をより一層深く被り寝たふりをした。 そうする事で何かが押さえられるような気がしたから。 それから15分後。東京駅に着いた。 ここでも恋人達で溢れかえっていた。 シンデレラ・クリスマス 意地悪な時が 2人を引き裂いても この愛だけ永遠 シンデレラ・クリスマス 閉じた汽車のドア 君は息吹きかけて 指文字で無限大 描いて笑う 反対側のホームで映画やドラマで見る光景が目に映った。 遠くに行ってしまう彼氏、彼女が囁き合ってる。 2人だけの世界・・・。 そして長いキスをして、彼女が泣きながら 電車の中から笑顔で手を振っている。 彼氏は何度も頷きながら笑顔で答えていた。 それを見て、なぜか切なくなった。 きっと、2人はもう当分逢えないんだろうな・・・。 唇と唇が触れ合う。 ただそれだけの事なのに安心するのは きっと心と心も繋がるからだろう。 それから電車に乗って改札口を出た。 信号待ちしてると・・・。またか・・・。 でも、不思議に嫉妬していない自分に気付いた。 多分、今日の自分達の事を思い出したから。 思い出すだけで心が温かくなった。 午後10:00。家に着いた。 それから風呂に入って、その後TVを見ていた。 “I LOVE YOU ” またか・・・。 今日は、この光景を何回目にした事か。 クリスマス・イブってキスをする日なのか? そう思うと、なぜか笑えてきた。 あっ! 今日で何回目のKISSだったんだろう? あの時と、あの時と・・・。 まだ記憶に新しいKISSの数々。 そして、俺は初めてKISSした時の事を思い出し 胸が熱く、切なくなった。 気持ち良さそうに眠ってる倫子さんが可愛くて 思わず、そっと触れてしまった。 小さくて・・・どこか色っぽい唇に。 そして『好きなんだ・・・。』と告白。 倫子さんが聞いてないから言えたんだけど。 シンデレラ・クリスマス 12時までのDream 無数の雪の華が 君の髪を飾る シンデレラ・クリスマス ガラスの靴さえ 僕たちにはいらない 普段着のままの君 愛してるよ 午前12:15。 携帯が鳴った。 あっ!もしかして・・・。 ガチャ! 『もしもし。』 「もっ、もしもし?滝沢くん?」 電話の向こうの相手は、かなり焦ってる。 『うん。』 「最高のクリスマスプレゼントありがとう。」 『♪恋人がサンタクロース〜♪だもん、同然。』 「今度、会う時まで最高のプレゼント用意しとくね。 さっきのキスだけじゃ、物足りないでしょ?」 『えっ?うっ、うん。まぁ・・・。』 その話題に動揺してしまった。 そして、それを誤魔化すかのように、言った。 『あっ!自分にリボン掛けて“私〜”とか言うんでしょ?』 「えっ?なんで分かったの?」 冷静な声が聞こえた。 だから、思わず本気で答えてしまった。 『えっ、まっ、まじ?まじで?』 「うそよ。嘘に決まってるじゃん!」 『そんな力強く言わなくたって・・・。』 小声で言った。 「えっ?」 『てっきり、その気になったのかと思ったよ。』 「その気って?」 『そっ、それは・・』 「あっ!分かった!♪気になるき〜 でしょ?』 『はぁ?訳分かんないよ。』 少し、イジケ気味に言ってしまった。 なんだよ・・・勇気を振り絞っていったのに。 ったく、鈍感なんだから・・・。 次の言葉が見付からず黙っていると倫子さんが言った。 「その内、あ・げ・るっ!から楽しみにしててね。」 笑いながら言ってるのが伝わってきた。 あっ!もしかして俺・・・からかわれてる?この俺が? ヤバイ!形勢逆転してる。 よ〜し・・・。そして、いつものように反撃した。 『分かった。近い内、も・ら・うっ!から。覚悟しときなよ。』 「えっ?ほっ、本気?」 今度は倫子さんは焦ってる。 その証拠に声が裏返っていた。 『うそ〜。な訳無いじゃん。』 「なんだ・・・。てっきり。って・・・えーっ!」 『あはは。今気付いた?やっぱ倫子さん鈍感!』 「もぉ〜!!」 それから時の経つのを忘れ、色んな事を語り合った。 シンデレラ・・・ それは物語の中に存在する架空の人物。 でも、どんな女性もお姫様になれる。 ガラスの靴のような、純な心を持っていれば いつかは巡り会える。たった一人の王子様に。 そして幸せな時を刻んで行くのだろう。俺達のように・・・。 |