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夏 祭 り
2001年8月
しいな 作


今日は、神社のお祭。家族連れや観光客で賑わっている。

私と女友達2人は、男の子達と7時に神社の境内で 待ち合わせしていた。

境内の舞台では、舞を披露していてお囃子や太鼓の音が聞こえる。

私たち3人は、神社の境内の入り口の鳥居の近くで待っていた。

ふと、聞き覚えのある声が雑踏の中から聞こえた。

低めのハスキーボイス・・少し甘め。

私達は、いっせいに声の方を見た。

3人の男の子達が浴衣姿で走ってくる。

「滝沢くん、今井くん、山下くん!こっち、こっち!」

私達は、手招きする。

「悪ぃ!待った?」

滝沢くん達は、私達に近づいて来てそう言った。

普段見ることの出来ない浴衣姿。

いつものカジュアルな格好もいいけど・・似合うなぁ。

滝沢くんは、袖を肩まで捲っていて、二の腕が見える。胸元も・・暑いからかな?

ちょっと開いていて・・ドキドキしてしまう。

「ううん。ほんの少し5分くらいだよ。」

私達は、まったく気にしてないと答える。

本当は・・20分も前に来てみんなでソワソワしてたんだけど・・。

お互いの浴衣や帯が変じゃないよね・・とか髪型やお化粧が落ちてないとか確認し合ったりして・・。

「どうする?何から見よっか?」

滝沢くんが私に話しかけてくる。

「おみくじ・・引いてもいっかな?」

「別に・・いいけど・・何で?」

滝沢くんの隣にいる今井くんが逆に聞いてくる。

「だって・・ねぇ。やっぱり神社に来たら引くでしょう。」

と力説して、私達はダッシュして売場の巫女さんの所に行っておみくじを引く。

開けて見てみると・・ ホッ!°gだった。可もなく不可もなくかな。

安心して他の2人を見ていると。

1人は、大吉みたいで今井くんと仲良さそうに話をしていた。

「がぁ〜〜ん!凶だよっ。ショーック!」

ともう一人の友達は大騒ぎしている。

「たかが占いじゃん。結んであげる。貸してみて・・。」

一人だけ年下の山下くんが彼女のおみくじを木の枝に結んであげてた。

「あっ・・ありがとうぉ。」

「うん。」

山下くんは、「へへっ」と鼻の下を指でこすってる。何か照れてる。

いいなぁ・・いい雰囲気だなぁ。

私は、自分のおみくじを見る。う〜ん・・健康に注意か・・。

何か視線が・・見ると滝沢くんが近づいてきた。

「どうだった?」腕を組んでおみくじをのぞき込む。

「えっ?きっ・・吉。」と私は、少し動揺。

「ふ〜ん。悪くなくて良かったじゃん。」

私は、素直に頷く。

ふと、滝沢くんは、私が持っていたおみくじを取って山下くんと同じように木の枝に結んだ。

私がじっと見つめていると、

「ああ・・健康に注意とか書いてたから・・だめだった?」

「ううん・・ありがと・・。」

「じゃ・・行こっか?」

何だか嬉しそうにしているのは・・私の見間違いかな・・。

笑顔が眩しい。私の心臓の音は鳴りやみそうにない・・。








 その後、私達は縁日の出店で金魚すくいや射的などゲームをしたり、たこ焼き、 綿あめ、かき氷を食べたりして楽しい時を過ごした。

「さ〜て!〆は、やっぱりお化け屋敷っすか?」

男の子3人と他の2人は盛り上がっている。

うわ〜〜。苦手なんだよなぁ・・この手のものは・・。

「あれ?どうしたのかな〜?顔強張ってる。」

滝沢くんが意地悪っぽく声を掛けてきた。

「怖いんでしょ?」と今井くん。

「先頭に立ってもらおっかな〜。」と山下くん。

ああ・・みんな・・意地悪だっ・・。

しかし、友達2人に両脇を抱えられ強引に連行される私。

暗闇の中・・あの・・おどろおどろしい笛の音やお線香の香りが・・。

みんなの「きゃ〜!」とか「うわぁ〜!」とか叫び声が聞こえる。

でも、全然・・怖そうじゃない。楽しそうだなぁ。私だけ本気で怖がってる。

いつの間にか・・両脇の友達もいなくなってしまって目を瞑りながらゆっくりと歩き出す。

その間・・こんにゃくが何回も降ってきて顔に当たったり

お化けが襲ってくるし。怖くて誰かに思いっ切りしがみついてしまった。

「大丈夫だって!こんなの作り物なんだから。」

あの優しい声が耳元に届く。

私・・滝沢くんにしがみついちゃったの?

「ごっ・・ごめん!」

私が慌てて離れてそう言うと、

「何で?別にいいよ。一緒に行こうぜ。」

・・と優しく手を差し伸べてくる。

私は、ドキドキしながら滝沢くんの左手にそっと手を添える。

すると、男の子の大きな手が私の手を包み込みGyu!と強く握る。

「行こっか?きっと・・あいつら待ってるし・・。」

微かな光に照らされた彼はすごく優しさを称えた瞳だった。

後半の道のりは彼が隣にいることで意識しているせいか全然怖くなかった。

光が見えてきて出口が現れる。

幕みたいのを抜けると外に出た。・・と同時につないだ手を離してしまった。

「な?大丈夫だろ?あっ・・でも、怖がってくれた方が良かったかも・・。」

「えっ・・何で?」

「それは・・まぁ・・ねぇ・・。」

笑顔の彼・・。さっきから・・私の鼓動は鳴りっぱなし。止まらない。

私は・・ドキドキを誤魔化そうとして・・他の4人を探す。見回すけど見あたらない。

「ねぇ・・みんな・・どこ行ったのかな?ひどいよねぇ・・待っていてくれてもいいのに」

私は、持っていた巾着から携帯を取り出して連絡を取ろうとすると・・。

「あいつら・・気を利かしてくれたのかも・・。」

滝沢くんは、私から携帯を奪って電源を切った。

私が・・きょとんとしていると ・・。

「お前ってさ・・鈍感だよな。」とため息をつく。

そして、再び私の手を取って歩き出した。

それって・・もしかして・・そういう意味かな・・?

たぶん、私の顔、真っ赤かもしれない。

彼とつないだ右手が熱い。熱を帯びている。

歩いていると人通りもまばらになってる。子供も歩いていない。

出店も次々と閉め始めている。

「もうそろそろ・・帰ろっか?」

「うん・・。」

私は、彼の提案に素直に従って手をつないだまま歩いてる。

カランコロンと下駄の音だけが響く。暫く歩いてちょうど分かれ道。

「あの・・じゃ・・ここで・・。」

そう、滝沢くんに告げるけど彼は繋いだ手を離そうとしない。

「滝沢くん?」

「家まで送るよ。」

彼に引っ張られるように私は手を引かれていく。

でも、私に合わせてゆっくり歩いてくれる。

「あのさ・・分かってると思うけど・・オレ・・。」

私は・・そう切り出す彼を見つめる。ちょっと緊張した真剣な表情。

「お前のこと好きなんだよね・・。」

いきなりの告白。私は・・立ち止まってしまう。

何も言えず・・無言。私は、半信半疑。

「何だよ・・何とかいえば?分かんねぇじゃん。」

彼は、俯いた私の顔をのぞき込む。

「オレのこと、好きですか?嫌いですか?」

「・・・。」ぼそぼそと自信なげに私はか細い声で言った。

「聞こえない×2嫌いなの?」

わざと悲しそうな表情をする。

「ううん・・好きだよ。」

私は・・その顔を見て吹き出してしまった。

「本気?やった!」

滝沢くんは、満面の笑み・・エクボが出来てる。

そして突然・・ぎゅっと抱きしめられる。

「ちょっと・・帯が邪魔だよな・・。」

私は・・ちょっとぎこちなく私の腰あたりに手を回そうか悩んでいる彼がとっても可愛く見えた。

そして・・ちょっと背伸びをして・・軽く・・キスをした。

その瞬間のびっくりして目を見開いた 彼の顔は忘れないと思う。

「ありがとう。ここでいいよ。」

私が離れて家に向かおうとすると、

「ちょっと・・待てっ。あまりに不意打ちで・・オレ・・情けなくない?」

自分を指さして私にそう聞いた。

「ううん、可愛かったよ。それじゃぁ・・だめ?」

「当たり前だろ。男が可愛いって言われて嬉しいかよ。」

今度は、彼が私に近づいてくる。

・・でじっと私を見つめる。

黒目がちな瞳に私が映ってる。ドキドキ・・私は自然と目を閉じる。

肩を掴まれて引き寄せられる。柔らかな感触が唇に伝わってくる。

その時・・カメラのフラッシュが!!

私達は、その方向を見ると別れた他の4人の友達だった。

「いやぁ・・映画を見るようだったよ。」

・・と今井くんがコンパクトカメラのフイルムを巻き戻しながら言った。

「ビデオカメラ持ってくれば良かったよね。」

山下くんがニコニコしながらそう言った。

「もしかして・・途中でつけてたのか?趣味悪いぞ!」

滝沢くんは・・今にも飛びかかりそうだった。

「いいじゃん。両思いになったしさ。セッティングしたオレたちに感謝しなさい!」

・・と再び私と滝沢くんのツーショット写真を録る今井くん。

他の3人は、拍手してる。

「翼くん・・今日は・・家に泊まっていくよね?」

滝沢くんが今井くんに詰め寄る。

「えっ?・・今日は止めておこうかなぁ・・。」

2人はじゃれ合ってる。(仲が良いなぁ。)

近所迷惑かもしれない。案の定・・「うるさい!」とお声が掛かる。

「やば・・。」

山下くんは、そう言って友達の一人を連れて「また、誘ってくださ〜い。」と帰っていった。

友達は嬉しそうに手を引かれていった。

今井くんももう一人の友達を家まで送るからと言って去って行った。

どうやら・・やっぱり滝沢くんの家にお泊まりするらしい。

「それじゃぁ・・またな。今度はさ2人で会おうぜ。」

「うん、連絡するね。」

そういえば・・近々・・花火大会があったっけ・・。誘ってみよう。

私は・・布団の中で今日あった出来事を思い出してにやけていた。

妹には・・気味悪がられたけど・・。

そして私は、幸せ気分のままで眠りについたのでした。

―FIN―




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