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ツリー Lion Heart 3章 ツリー
2000年12月
海亜 作


そして説明してくれた。
『1718年。今から282年前ドイツの話。
ミュンヘンにレオンハルト・ローゼンハイムっていう人が居たの。
その年の12月24日。
レオンは、オンディーヌという女性に出会って惹かれ合うの。
そして真実の愛を知るの。
でも2人の前には色んな障害が次々に訪れて・・・。
レオンは旧公爵家の若君で総帥の御曹司。
一方、オンディーヌは召使。使う身と使われる身。
身分が違い過ぎる為、周囲の目を忍んで愛を育んだの。
でも同じ屋敷の中の事。
2人の関係が知れ渡るのに時間は掛からなかった。

そしてレオンは父であるセルジュにオンディーヌとの結婚を申し出たの。
でも簡単に受け入れられるはずが無かった。
それからセルジュは色んな手段を使って2人を引き裂こうとした。
レオンに他の女性と結婚するように仕向けたり
カンタレラ(媚薬)を飲ませオンディーヌの事を忘れさせようとしたり・・・。
でも、そんな事で忘れるはずがなかった。
逆にオンディーヌへの愛を募らせたの。

一方、オンディーヌにも、あらゆる障害が待っていたの。
夜、寝ている時、襲われそうになったり、
ダーク(毒薬)を飲まされそうになったり・・・。
でも、それは全てレオンが阻止したから助かったの。

それからも様々な障害が2人の前に立ち塞がり
2人の精神状態はギリギリに・・・。
そんな状況に耐える事が出来なかったオンディーヌは
レオンと出会って丁度1年目の夜、1人屋敷を出る事を決意するの。
自分の身の危険よりもレオンの将来の事を考えたんだと思う。
レオンはオンディーヌが遠くに行ってしまうのを感じたのか
その夜、生涯の愛を誓い、そして手紙と、この首飾りを贈ったの。』

『その後・・・どうなったんですか?』
話の中に引き込まれて質問してしまった。

『2人の愛は本物だったのね・・・。
遠くに離れてしまっても愛する人への気持ちは変わらなかった。
3年後の12月24日、町で偶然の再会を果たしたの。
その日は2人が初めて出会った日。
神様が導いてくれたのかもしれないわね。

2人は変わらぬ愛を確認し、生涯供にする事を誓った。
聖夜に輝く星と、奉られているイエス・キリストに。
そして2人が亡くなった後も純愛の守護神として
慰霊祭が毎年12月24日に行われるの。』

『ステキな話ですね。』
『そうね。でも、この話を説明すると買わない人が多いのよ。』
『えっ?どうしてですか?』
『きっと・・・気持ちが重いんだと思う。
それだけ今の恋人達は愛が軽いのよね。』
『そうっすね・・・。』

〜すみません〜
店員さんが他のお客さんに呼ばれた。
『あっ、ちょっとごめんなさいね。』

そして手渡された説明書を読んだ。

ove・・・愛
・・・私
nly・・・ただ1つ
ecklace・・・首飾り

appy・・・幸せ
ngage・・・誓い
lone・・・孤独、独りぼっち
emember・・・思い出す
ogether・・・一緒


Dear オンディーヌ
 “する君が遠くに行くような気がする。
  は何をすべきなんだろう・・・。
  たった1つの答えしか思い浮かばない。
  首飾りを贈る事。
  鎖と鎖。それは心と心が繋がる事を意味している。
      
  君の幸せそうな笑顔・・・忘れない。
  君に誓ったあの約束・・・必ず守る。
  目に見えない孤独感に襲われる事もあるだろう。
  そんな時は、これを見て思い出してほしい。
  心はいつも一緒だって事を。 
  いつか迎えに行く、その日まで・・・。
 from レオンハルト・ローゼンハイム

『どうする?』
店員さんが戻ってきた。
俺は考える間もなく答えた。
『これ、包んで下さい。』

〜ありがとうございました〜

小さな箱に入ったプレゼント。
倫子さんは、この意味を知った時、どう思うんだろう。
“どんな困難でも乗り越える、変わらぬ愛”
重く感じるのだろうか・・・。嬉しく思うんだろうか・・・。
今日、ここに居ない事が幸せを運んでくれたような気がした。
冬とは思えない温かく、優しい風と供に・・・。

12月15日。
仕事が早く終わった。と言っても午後10:00。
あれから10日以上も倫子さんの声を聞いていない。
元気にしているのだろうか・・・。
それすら分からない状況が苦しく、もどかしい。

俺は夜のジョギングへ出掛けた。
どうしようもない気持ちを押さえる事が出来なかったから。
走る事1時間。
『ふぅ〜、なんかスッキリしてきた。』
そして駅前を通り過ぎようとした時、俺に手を振ってる人が。
青い帽子を深く被っている。
誰だろう?
暗がりと距離のせいで顔が見えない。
そして、ゆっくりと近付いた。
にっ、二宮?!

―つづく―




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