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観覧車
first date
2000年9月
ぺこ 作


「え?遊園地?・・・・う〜ん、分かった。行くよ」
「じゃ、明日11時に駅の改札でね。」
「おう!」

あ〜、あんまり人ごみには行きたくないんだよな。
しかも、遊園地なんて、子どもじゃないんだから・・・・・。
でも、杏子にああ言われたら断れない。
今まで仕事か男同士でしか行ったことないから、どうなるんだろう?

「あ!滝沢くん、ここ、ここ!」
「ウン、分かってるって。そんなデカい声出すなよ」
「ごめん。だって遅いんだもん。寝坊したでしょ?」
「だって、夕べおそくまで仕事で・・・」
「さ、行こ、行こ。じゃんじゃん乗ろうねっ」

杏子、元気だな。今日もはじけてるよ。
二人だけで会うのは、今日が初めて。
あ、デートっていうんだろうな、これって。
彼女、ブルーのキャ、キャ、、キャミソールだ。
けっこう肩が華奢で、目のやり場に困・・・・らなさすぎっ。
オレなんか、いつものTシャツとGパン。
部屋の中のジャージよりはマシだけど。

「ねぇ、何に乗ろうか?」
「後楽園遊園地ってこうなってるのか。隣の東京ドームには 運動会やコンサートで入ったことあるけど、こっちは横目で見てる だけだったもんなぁ〜。」
「なに、ブツブツ言ってるの?アレ、乗ろうよ、自分で操縦できる 飛行機!」
「え?あれ、けっこう揺れそうだぜ、いいの?」
「ん?ぜ〜んぜんOKよっ!あ、滝沢くん怖いんでしょ?」
「何言ってるんだよ、オレだって絶対負けね〜〜から」

あ〜〜あ、ちょっと寝不足なせいか、ちょっと参ったな。
目が廻りそうだ。

「キャ〜〜、アレに乗りたい。あの高いの。いつも水道橋の駅から 見えてて、乗りたいと思ってたの。わ〜、地上80mだって!」
「タワーハッカーって言うのか・・・・ガ〜〜〜ンって落ちるんだぜ」
「平気、平気。さ、行こ!」

へぇぇぇ〜〜、すんげえ重力。杏子ったらキャ〜、キャ〜騒ぐし。
でも、楽しいな。何もかも忘れられる。
いいな、女の子と騒ぐのも。

「ねぇ、喉乾かない?」
「うん、何か飲みたいな」
「おおっ、ソフトクリームがある!」
「えぇ〜?滝沢くんて甘いもの好きだっけ?」
「だって、何となくデートっぽいじゃん」
(「デート」なんて言っちまった)
「ふふふ・・・でも、私はジュースにするっ!」
「ホラ、美味しそうだろ?少し食べろよ」
「え?いいの?」

こういうのって、自分がやるとは思ってなかった。
ちょっぴり恥ずかしいけど、杏子だとなぜか自然にできた。
こんなオレって、いつもの滝沢じゃないけど、けっこういいかも。
同じスプーンで。。。なんちって。
杏子がコップ持った時、小指がちょっと立って、可愛かったな。
すっげぇ元気なのに、ちょっとした仕草が女の子らしい。

「やっぱりお化け屋敷行かないとねぇ〜。」
「・・・・・どうせ、アルバイトが驚かしてるんだろ?」
「でも、面白そうだから、行こう、ね?」

スカイダイビングだってやったことあるし、高いところなんか、 全然平気ないんだけど、実は怖いのって嫌いだ。
でも、杏子の前ではそうは言えない。

* * * * * * *

ううう、ビクった。ああいうの、やっぱ苦手だ。
一瞬、ギクっとなって杏子に悟られたかも・・・・。やべぇ。
アイツだって、あんなに強がってたけど結構怖がって、オレの腕にしがみついてた。
でも、自然に手をつなげちゃったってわけさ。でへっ。
翼に自慢してやろ。

「わぁ、可愛いっ!あれ、乗ろう!メリーゴーラウンド!」
「げぇ〜〜、カンベンしてくれよぉ」
「ダメ、ダメ、滝沢くんは、あれね!白馬!」
「あ〜〜分かった、分かった、分かりましたよ。」
「うふふ・・・ピッタリよ!王子っ!」
「!!!!おまえは、ピンクの豚かいっ!(笑)」

なんか周りのカップルも、とうとうオレに気付いたみたいだ。
だけど、アイドルがデートして何が悪い!
オレだって18歳の普通の男の子がするようなことをしたいだけなんだ。
そういうことをガマンしたくない。
できるだけ普通にしたいんだ!

「なんか元気ないね、滝沢くん。観覧車キライ?」
「そんなことは、ないよ・・・。」
「そうそう、前にTVで見たけど、女優さんと一緒に一周するのやってたよね」
「あれ、別の意味で、ちょっと怖かったけど。(苦笑)
だけどさ、オレとこうやって外で会うのって、初めてでしょ?どう?」
「うん?別に。すっごく楽しいよ!」
「そうじゃなくてさ、人の目とか気にならない?」
「あんまり。みんな、それぞれ好きな人と楽しくしてるし。私たちだって同じだよね?」
(好きな人って・・・・)
「そうだけどさ、これから、人の噂とかになったら、杏子にも迷惑がかかるかな、って・・・」
「そんなこと考えてたの?
そりゃ、滝沢くんは人気アイドルだけど、こうやって会ってる滝沢秀明は、普通の男の子だもん。 私は普通の滝沢くんが好きなのっ!」
「ふふふ・・・・杏子らしいな。なんか、ちょっと気が楽になったよ。・・・隣に座ってもいい?」

「わ〜〜、キレイ!もう、夕焼けだね〜。東京の街もけっこうイケるよね。」
「よ〜〜し。このまま何周も乗っちゃおう!東京タワーの電気が消えるまで・・・」

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