悲しみが解けるとき 最終章
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2002年3月 しいな 作 |
すると・・どこからか「滝沢く〜ん」と呼ぶ声が聞こえる。 その声は、だんだん近づいてくる。 「滝沢くん!偶然ですね〜。仕事の帰りなんですよ。あれ?」 少し鋭い切れ長の目をした少年と人懐っこそうな端正な顔立ちの少年が声を掛けてき た。 「何だよ〜。お前らかよ。誰かと思った。」 滝沢くんの知り合いらしい。 でも・・どこかで見たことがあるような・・・。 「あ〜!写真に写ってた人じゃん。何?デートっすか?」 にこにこと私と滝沢くんを交互に見て嬉しそうにしてる。 「お前っ・・違うんだよっ・・困ってるだろ〜。」 私は、戸惑いながらも3人の男の子達の会話に笑ってしまった。 仲良いんだな〜。微笑ましい。なんて見ちゃったけど・・帰らないとな。 「じゃぁ・・私は、ここで・・。」 と言ってその場を後にする。 「えっ!?ちょっと・・さくらさん!」 私は、手を振って走って駅に向かった。 滝沢くんのおかげで・・少しは、前向きになったかもしれない。 忘れられないかもしれないけど・・。頑張ってみようと思う。 私は、滝沢くんから渡されたメモの番号を携帯に打ち込んだ。 何回目かのコールで相手が出た。 「もしもし・・私・・さくら・・さっきはごめんね。」 そう言って久しぶりに友人と話をした。 そして、駅に向かってゆっくりと歩き出した。 「お前らのせいで送って行けなかったじゃないかよ。」 その場に座り込むオレ・・くそ・・また会う約束を取り付けられなかった。 亀こと亀梨和也と仁こと赤西仁は、申し訳なさそうにお互いを見る。 「だってぇ・・てっきりそうなんだと思っちゃったんですもん。」 「オレも・・そう思ってました。違うんですか〜?」 残念ながら・・違うんだよっ。と目で訴える。 はぁ・・また、公園で会えればいいけど・・コンサートの準備で忙しくなりそうだ し。 なかなか・・行けなくなるかもな〜。 会っても・・忘れられてたらどうしよう。 「滝沢くん、今日・・泊まりに行っていいですか〜?」 音声多重放送・・ハモってる。 「またかよ〜。お前ら・・来すぎだっちゅうの!」 仕方ね〜なと笑ってオレはそう二人に言う。 「で?飯食ったの?」 二人は、「いいえっ・・お腹くっつきそうですっ。」と首を横にブンブンと振る。 何を食いたいとリクエストすると・・すかさず・・「肉!」と贅沢な事を 言った。 お前ら・・さくらさんを見習え!なんて思ったけど・・口に出したって 聞きやしないだろう。 オレは、二人を連れて行きつけの焼き肉屋に向かったのだった。 「おかえり〜。お〜さっぱりしてる〜。」 と義姉がもう船を漕いでいる和ちゃんとお出迎え。 和ちゃんは、私を見つけるが・・「?」って顔をしてる。 髪型変わったからかな〜。抱こうとするけど・・ちょっと嫌がってる。 少しショックだ・・。 「変ね〜。そういや・・何か雰囲気変わったかな〜?」 えっ?そ・・そうかな・・。何でだろう? 私も首を傾げる。 「ねぇ・・ご飯は?ケーキも残してあるのよ。」 「食べて来た。ラーメンだけど・・あっ・・これこれ・・。」 私は、鞄から滝沢くんが撮ってくれた写真を義姉に見せる。 「へぇ〜。良く撮れてるじゃない。プロっぽいねぇ。」 うん。モデルもカメラマンも良いからね! なんて思いながら、私は残っているケーキを頬張る。 「ねぇ・・これ・・誰撮ったの?」 えっ?その写真は、滝沢くんと和ちゃんが一緒に写ったものだった。 それは、私が教えて貰って撮ったものだった。 ぎくぎくっ!私は、即答出来ずにいる。 少し経って・・「たっ・・滝沢くんだよ。」とドキドキ答える。 途端に・・義姉の顔がじーっっと見つめられる。 「もしかして〜!さっき電話に出た時一緒にいたのって・・タッキーだったの!?」 和ちゃんを椅子の上に下ろして私の隣に座る。 「や・・え〜と・・違うんだよね。公園で偶然あって渡されただけだから。」 ちゃんと目を見て話せないのよね〜。怖くて・・。 「ずるいっ・・私もタッキーに会いたいっ!」 「あの公園なら・・会えるかもよ。和ちゃん連れて行ってみたら?」 すると義姉は、ノリノリで「おし!休みの日の散歩は、あそこにする!」と 宣言して和ちゃんをベビーベットに連れていった。 ほっ・・と、疑惑の視線から解放されて安堵する私。 すると、お風呂から上がったお兄ちゃんがビール片手にやってきた。 「お?どうした?何か晴れ晴れした顔して・・良いことあったのか?」 私は、もう少ししたら大学に戻ろうかということを話した。 「へぇ〜・・良かったな〜。オヤジやお袋も喜ぶな。でも、何で?イキナリ?」 私は、「まぁ・・いろいろと・・。」と答える。 それで、納得出来てるようだ。 言えないよね〜自分より年下の男の子に励まされたなんて・・。 滝沢くんに感謝しないとな・・また、会えるか分からないけど・・。 「そういや・・もう少しで命日だろ・・あいつの・・。」 「ああ・・そうだった。忘れちゃだめだよね。」 私は、カレンダーに○をつける。 いつも湿っぽい私だけど今回は、良い報告が出来そうかも・・。 テーブルの上にある写真を見つめて・・そう思った私だった。 ― Fin―
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