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笑顔の行方
alarm clock
2000年9月
しいな 作


目覚まし時計の音がなっている。
起きないと・・。
「あ・・今日は休みだっけ・・。」
そう呟く私。
昨日は、飲みなれないアルコールをたんまり服用したせいか、 頭がガンガンする。
これが、2日酔いってやつなのね。
私こと小沢日向は、鳴っている音を消すべく寝ぼけながらいつも置いてある場所 に手を伸ばす・・が、時計がない。
「あれ?」
すると・・音が止まる。
何でだろ?
手を伸ばした先で何かに当たる。
そして、背中に柔らかい感触が・・。誰かいる!?
恐る恐る、身体を起こして後ろを振り向く。
うっそぉーーーー!!
隣には、上半身裸の美少年が寝ていた。
私の方を向いて横向きになってる。
寝息が聞こえる。気持ちよさそうに眠っていた。
驚きのあまり声もでない。
ふと、自分が下着のままなのに気付く。
よけいに私はパニクってしまう。
彼の顔を覗き込む。
少し日に焼けた顔。形の整った眉。目の下の泣きぼくろがセクシーだなぁと思う 。
髪の毛は短髪でふわふわ。前髪がおりてる。
すっごい綺麗で見とれてしまう。
かなりドキドキしながら彼を起こさないようにそっとベットから降りる。

「ふう・・。」息を吐く・・。
彼の横向きだった身体は寝返りをうつ。そして俯せになる。
そのせいで、掛けてあったタオルケットが乱れる。
腰まではだけて、背中のラインと肩胛骨がすごく綺麗。無駄のない筋肉。
色っぽーい。いいんでしょうか・・?目の保養をしてしまって・・。
もう、釘付け状態・・。汗が出てくる。

なんとなく、辺りを見回す。自分の部屋じゃない。
すっごいシンプルな部屋。まさに、寝るだけって感じだ。
開いているドアの向こうにはミキサーみたいな機材らしきものが見える。
何をやってる子なんだろう。
しかし・・そもそも何でこういう状況になったかなんだけど・・。
ああ・・何にも憶えていない。
憶えているのは、2年つき合ったあいつと別れたことくらい。

「う・・ん・・。」
すんごく、悩ましい声が漏れる。少しどきっとする。
「あ・・おはよう・・」
低めの少し掠れた声。
そして、俯せになっていたのがまた寝返りをうって 仰向けになる。案外逞しい胸板と腹筋。
ああっ!!もうっ、心臓破裂するってば!!
それでも・・目が行ってしまう、数分間。
自分が下着でいることなんてすっかり忘れてた。
「いつまで・・見てんの?」
目を覚ました彼が意志の強そうな瞳で私をみつめる。
そんなこと言われても視界に入ってしまうんだもん。
彼は上半身を起こして、伸びをする。そんな仕草でさえ格好いい。
「あのさ・・見られて言うのもなんだけど、オレも目のやり場に困るんですけど ・・。」
少し照れてる。
そりゃ、そうーだ。私は近くにあったTシャツとGパンを着ながら聞いてみる。
「あのぉ、私・・何かしたのかな?」
彼もボクサーパンツの上からGパンを履いている。
「ふーん、憶えてないんだ・・まぁ、すごい酔ってたからね。」
ああ・・ほんとうにすっかり飛んでるんですよ。記憶が・・。
「オレ・・あなたにナンパされたんだよ。」
私は整っている顔を見る。
「嘘ぉ?」というと、「ほんと・・。」と彼は頷く。
私は落ち込む。
いくら、結婚したいなぁって思っていた相手に振られた後とはい え、ナンパなんて情けなーい。
それも、こんな超美少年を・・。

何でも、相当酔っぱらっていた私は彼を強引にナンパした後、地べたに寝てし まいそうだったらしい。
家に送ろうにも、住所もわからず、警察にとも思ったらしいけど、結局自分の家に連れて来たという。
「だけど、何故・・裸なの?」
「脱がされたんすよ・・あなたに・・」
マジっすか?
部屋に上がって、ベットに寝かされた私は、自分の来ていた服を脱ぎ捨て、 彼のもはぎ取ったという。
(いやーん、恥ずかしい・・。)
その後、ベットにそのまま崩れ落ち爆睡。
「オレもいつも裸だし・・まぁ、しがみついて離れなかったんで、疲れてたのも あってそのまま寝ちゃったんだよね・・。」
苦笑い。ちょっと赤くなってる。テレてんだね。
「ごめんなさーい。ああっ、やけ酒なんてするから・・。」
もう、泣きそう。彼に拝むように頭を下げる。

そのとき、玄関だろうか、ドアの開く音がする。
「滝沢ー。行くよーって。お?」
眠そうな声のあと、部屋に入って来た声の主は私と上半身裸の彼を見て驚く。
アーモンドのようにクリクリした瞳。細身でしなやかな肢体がまぶしい。
「あー。ごめん。出直して来よーか?」
低めの明るい声。やっべーって感じで彼に聞いてる。
「ああ・・翼か・・。そっか、そんな時間だっけ?そんなんじゃないってば、 いろいろあってさ・・。」
と慌ててそこら辺のシャツを着てる。
それにしても、こんなに格好いい男の子ふたり・・一体・・。
ふと、ピンと頭に浮かぶ顔。滝沢?翼?
私は2人の顔を見つめる。
「あーーーーーーーっっ!!」
私は叫ぶ。何で今まで気付かなかったんだろう。
「ばれた・・。」
とにっこりと微笑んだ。そうっ、そのエクボっ!!
そう、彼らはジャニーズJr。アイドルだった。
                
「わはははははは」
後部座席で、今井翼くんこと翼くんは大笑いしていた。
滝沢くんは「うるせーよ!」といいながら、デジカメで撮ってる。
あの後、昨日と今朝のことを聞いての第一声。
私は愛車のキャミィを運転している。
「すごいねー!滝沢をナンパするなんて尊敬するよー!」
「やめてー!!落ち込んでるんだから。」
今日、2人は早朝ロケを決行する予定だったらしく、私はお詫びに海に連れて行 くことになったのだ。
「そうそう、寝言で男の名前呼んでたしね。振られたんでしょ?」
図星だから反論出来ないよ・・。
そうこうしているうちに海に着いた。
波は穏やかで、空も天気だ。雲も少ない。
降りると、早速滝沢くんはデジカメで風景を撮ってる。かなり真剣な表情。
すると、いきなりつめたいものが頭から掛けられる。
「ちょっとぉ、何するのよー。」
海水だった。翼くんはどっから持ってきたのか小さいバケツに海水をすくって 私にかけまくる。
私も負けずにかけまくる。
せっかく、着替えたのに!!とかいって滝沢くんにもかけたりして。
どれくらいそこにいたのか忘れたけど久しぶりに笑った。
初めて会った男の子達と真剣に遊んでしまった。
「下着までべちょべちょ・・」
と言うと、滝沢くんがいたずらっぽく、
「また、家来て着替えたら?」
笑っていう。年下にからかわれてる。
2人は上半身裸で走り回ってる。元気だなぁ。
「少しは元気出たー?」
滝沢君は大声でそう聞いてくる。
「まあね・・。」
うん、こんな日も悪くない。明日からまたがんばれそうな気がする。
その後、2人は海の中に入って泳いでいた。
       
 ※ ※ ※

後日、滝沢くんから、編集したビデオが届いた。
それを見ると、滝沢くんが撮ったあの時の映像が流れている。
私が映っている、笑顔いっぱいで・・。
何かメモが入っている。
「いきなり、裸のつき合いになってしまいましたが、また、車でどこかに連れ て行って下さい。
また、遊びましょう。
世の中、まだまだいい男いっぱいいますから、大丈夫っすよ!!
                       滝沢秀明    」

何言ってるんだか・・。
でも・・年下も悪くないよなー。とにやけながら思う私だった。

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