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会いたい気持ち
on my birthday
2000年10月
栞 作


夏が過ぎ、秋がきたなぁと感じるようになってきたある夜、携帯電話にメールが来た。
「だれ?こんな時間に・・・」と、私こと、晶は携帯を手に取り開いてみた。
「滝沢??」
滝沢ってスキューバ仲間 真美の彼のあいつだよねぇぇ。
端正な顔をした、でもエクボが印象的なとても格好いい男の子。
結構私の好きなタイプだったりする。いつ携帯のアドレスを教えたんだっけ??

「真美の彼でしょ?何だろう。」と、私はドキドキしながらメールを開けた。

“今晩は、何していますか?僕は今仕事から帰ってきました。”
時計を見たら・・・0時を過ぎてる!
“どうしたの?いきなり。アドレスを教えた覚えないよ!”
“アドレスは真美から聞きました。”
“どうしたの?何かあった?”
“何しているのかなぁと思って。”

何しているのかと思ってメールするの?何を考えているんだろう?どういうこと?

“もう寝ようとおもっていたところ。あなたは?” わたしってば、話しにのってる。。。マズイ!
“僕はこれからです。こんな時間に帰ってくると眠れなくって。晶さんに会いたいなぁと思ってメールしました。”

これこそ何?だわ。

“真美じゃないの?”
“うん!晶さん”
“うん!じゃなくて・・・”
“じゃぁ そう!”
“オイオイ”
こんなメールをしているうちに、1時近くになっていた。
“眠くないの?”
“なんだか側に晶さんにいて欲しくて。会いたいなぁぁ”
“何言ってるの?”
“だってあいたいんだもん”
“こんな夜中に両親と同居している私はでかけられません。”
                               
“外に出るくらいならいい?”
なに?やけに強引・・・
“外?”
“外に出るくらいならいいでしょ?”
彼は、何を考えているの??私も何しようとしているんだろう。
“出られない事も無いけれど、先に言っておく。私スッピンだからね。”
“いいっすよ。潜っているときに見慣れていますから・・・”
あっ、今更隠しても遅いって事ね。
“どこに住んでるの?歩き?車?”
“晶さんは知らないんですね。僕の家と晶さんの家って近いんですよ。これからトレーニングがてら走っていきまーす。”
走ってくるの?と相手のペースにまきこまれたままの私は、こんな思いも寄らない展開にドキドキして
“分かった。待ってる”
と、メールを送っていた。


★ ★ ★



近いって言っていたけれどどのくらいかなぁぁ。
1時過ぎ家の外に出てみた。あっ寒い!パーカーとマフラーしてきて良かった。
“まだかなぁぁ”と思ったとき、タッタッタッと走る足音。
「晶さん!よかった。待っててくれたんだ。」と言って突然私は彼に抱きすくめられていた。
「何?何なの?」私の心臓はドキドキ。
「晶さんに会いたかった。」
「真美は?」
「真美?なんで真美?」
「やっぱりそんなとき、側にいて欲しいのは彼女でしょ?」
「真美は友達ですよ。」
「やけに明るいねぇ」
「だって会いたい人に会いたいときに会えたんだもん。晶さんも会いたいとおもっていたでしょ?」
「まぁ、ねぇ。。。」と、素直な自分がとっても恐い。

「晶さん。目つぶって!」
「なんで?」
「いいからっ!」言って突然彼は私の額に、Kissをしていた。
「誕生日おめでとう。晶さんの誕生日に一番に会いたいっておもってた。強引だと思われても来ようって思ってた。」
「・・・」
「いつも会っていたい。ずっと一緒にいたい。いいよね?」
私は、抱きすくめられたまま“今何が起きているの???”と、大パニックの状況に飲まれつつ小さくうなずいた。
気にはなっていた彼だったけれど、誕生日にこんな事になるなんて・・・。

しばらく彼の温かさに身を任せていた。
どのくらいだっただろうか?
「晶さん?」と、彼が耳元でささやいた。
「大丈夫?風邪ひいちゃった?」
「ううん、大丈夫。只ビックリしただけ。」
「びっくり?僕の気持ち気付いてくれているとおもっていたのになぁぁ。でも、晶さんからいつもぼくを見ていてくれていたのは知っていたよ。」
「あ゛っ、気付いていた?」・・・バレテイタカ・・・・
「晶さん分かりやすいもん!何度も目があっていたの気づいていたし、目が合った途端そらされるからバレバレです。」
“情けない・・・”
「でも、僕は今日ここにくる決心が付いたからいいんだ。」私は黙って彼を見た。

「今日は夜中に襲撃しちゃったけれど今度は明るいときに会おうよ。
待っていてくれないんじゃないかとちょっと不安だったんだ。会えてよかった。」
「私こそありがとう。これでゆっくりねむれそう。」
「じゃぁ、晶さんお休みなさい。」
「あっ待って!」といって私は駆け寄り、自分のしていたマフラーを彼に渡しながら
「ありがとう」と、頬にKissをした。
一瞬戸惑っていた彼だけれど、なんだか照れくさくなってしまったのか、短く「おやすみ」と 言って帰っていった。
来た時の足取りより軽く聞こえたのは気のせいかな?

「来週は彼の誕生日なんだよなぁぁ」と、彼の後ろ姿を見送りながらクシュンと小さなくしゃみをした。

彼は気付いていないと思うけれど、私は彼の誕生日を知っているの。何をしておどろかそう。



 ―終わり―




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